空調の省エネはなぜ重要?7つの対策や効果を高めるポイントを解説

2026.8.4 AI空調・省エネ最適化

空調コストを抑えたいものの、「どの対策から始めればよいかわからない」「設備更新まで必要なのか判断できない」と悩む企業も少なくありません。

空調の省エネは、設定温度の見直しやメンテナンスといった運用改善から始められます。さらに、後付け制御やAI制御を活用することで、既存設備を活かしながら電気代を削減できる場合もあります。

この記事では、空調の省エネが重要とされる背景や今すぐ実践できる7つの対策、省エネ効果を高めるポイント、自社に適した対策の選び方を解説します。

企業で空調の省エネが重要とされる背景とは?

まずは、多くの企業で空調の省エネが求められている2つの背景を解説します。

背景1:電気料金の高騰と気温上昇によって空調コストが増加している

近年、電気料金の高騰と夏季の猛暑化により、企業の空調コストは増加傾向にあります。

資源エネルギー庁が公表している電気料金平均単価の推移によると、2024年度の産業用電気料金の平均単価は、2010年度と比較して約83%上昇しています。


出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2025/03.html

また、気象庁のデータでは、日本の年平均気温は長期的に上昇傾向にあります。


出典:「日本の年平均気温偏差」(気象庁ホームページより)(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html

外気温が高くなるほど冷房負荷は大きくなるため、空調設備の消費電力量が増加しやすいです。特に、長時間空調を使用するオフィスビルや商業施設、工場などでは、電気料金の上昇と冷房需要の増加が重なり、空調コストが経営課題の一つとなっています。

電気料金の高騰や猛暑化は一時的なものではなく、中長期的なコスト増加リスクとして捉える必要があります。今後も安定した施設運営を続けるには、空調設備の省エネ対策に取り組むことが重要です。

背景2:空調は建物の電力消費の大きな割合を占めている

空調は、建物全体の電力消費の中でも大きな割合を占める設備です。

資源エネルギー庁の資料によると、夏季の17時頃における電力消費のうち、一般的なオフィスビルでは空調が48.6%を占めています。照明は23.1%、パソコンは6.6%であり、空調の電力消費割合が特に大きいことがわかります。

また、一般的な飲食店でも、空調は電力消費の50.5%を占めています。施設の用途によって差はあるものの、空調は企業の電力使用量を左右する主要な設備の一つです。

参考:「夏季の省エネ・節電メニュー」(資源エネルギー庁)(https://www.tohoku.meti.go.jp/s_shigen_ene/topics/pdf/230622_4.pdf

電気代を効率的に削減するには、消費電力の割合が大きい空調から見直すことが有効です。

空調の運用改善は電気料金の削減につながる

空調は電力消費の割合が大きい設備だからこそ、運用方法を見直すことで電気料金の削減効果が期待できます。

空調設備の消費電力は、設定温度や運転時間、起動方法などによって変化します。例えば、始業時に複数の空調を一斉に起動したり、利用していない時間帯やエリアで稼働を続けたりすることは、電力使用量や最大需要電力が増加する要因です。

一方、設定温度や運転時間を適正化し、利用状況に応じた運転をおこなうことで、既存設備のままでも電力使用量を抑えられる場合があります。空調の省エネは、必ずしも設備更新から始める必要はありません。

まずは自社の空調設備の稼働状況を把握し、無駄な運転や改善できる箇所がないか確認することが重要です。

今すぐできる空調の省エネ対策7選

空調の省エネ対策は、大きく「運用改善」と「設備メンテナンス」に分類できます。なかには、初期投資をかけずに実施できる施策も多く、短期間で電気代削減につながるケースもあります。

ここでは、企業がすぐに取り組みやすい代表的な対策を7つ紹介します。

空調の省エネ対策1:設定温度を適正化する

空調の省エネで取り組みやすい対策の一つが、設定温度の見直しです。室内を必要以上に冷やしたり暖めたりすると、空調負荷が大きくなり、消費電力の増加につながります。

ただし、すべての施設で同じ温度に設定すればよいわけではありません。外気温や湿度、建物の立地・設備、利用者の体調などを考慮し、無理のない範囲で適切に室温を管理しましょう。

ただし、過度な温度変更は従業員の快適性や業務効率の低下を招く可能性があるため注意が必要です。空調の省エネは、単純に温度を上げ下げすることではなく、快適性とのバランスを考慮した運用が欠かせません。

空調の省エネ対策2:フィルターを定期的に清掃する

空調設備の効率を維持するには、フィルターを定期的に清掃することが重要です。フィルターにほこりや汚れがたまると空気の流れが悪くなり、必要以上の電力を消費する原因となります。

フィルターは月1〜2回を目安に状態を確認し、汚れが目立つ場合は清掃しましょう。利用頻度が高い施設や、ほこりが発生しやすい環境では、よりこまめな確認が必要です。

定期的な清掃によって空調効率を維持しやすくなり、電気代の増加や設備への負担を抑えられます。日常的に実施しやすいため、優先して取り組みたい省エネ対策の一つです。

空調の省エネ対策3:室外機まわりの環境を整える

室外機の吸排気環境は、空調効率に大きく影響します。室外機の周囲に物を置いたり、直射日光が当たり続けたりすると、熱交換効率が低下し消費電力が増加します。

そのため、周辺の清掃をおこない、十分なスペースを確保することが重要です。

また、日除けを設置することで冷房効率の改善が期待できる場合もあります。簡単なメンテナンスで効果が見込めるため、定期的な確認が欠かせません。

空調の省エネ対策4:運転開始時間をずらして分散起動する

始業時にすべての空調を一斉に起動すると、電力需要のピークが発生しやすくなります。

そこで、空調の起動時間を数分ずつずらすことで、最大需要電力を抑えられる可能性があります。特に大規模なオフィスや商業施設では、デマンド対策として有効です。

電力契約によっては基本料金の削減につながる場合もあるため、空調の起動方法を見直すことも重要な省エネ施策の一つです。

空調の省エネ対策5:終業前に空調を停止して運転時間を見直す

建物は熱容量を持っているため、空調を停止しても室温がすぐに大きく変化するわけではありません。そのため、終業直前まで空調を稼働させなくても、快適性を維持できる場合があります。

例えば、終業時刻より前に停止時刻を仮設定し、実際の室温や利用者への影響を確認しながら、適切な停止時刻へ調整する方法があります。ただし、適切な停止時刻は、建物の断熱性能や外気温、在室人数、設備の運転状況などによって異なるため調整が必要です。

業務や快適性への影響を確認しつつ、無理のない範囲で運転時間を短縮することが、省エネと電気代削減につながります。

空調の省エネ対策6:ナイトパージや外気導入を活用する

ナイトパージとは、夜間の涼しい外気を利用して建物内にこもった熱を排出する手法です。翌日の空調負荷を軽減できるため、省エネ効果が期待できます。

また、外気導入を適切におこなうことで、冷暖房負荷を抑えられる場合もあります。

ただし、外気温やCO2濃度などの室内環境を考慮して運用することが重要です。建物の設備仕様に応じて適切に活用しましょう。

空調の省エネ対策7:熱交換器の洗浄や設備メンテナンスを実施する

フィルターだけでなく、熱交換器の汚れも空調効率を低下させる要因です。

長期間メンテナンスをおこなっていない設備では、性能低下によって無駄な電力を消費している可能性があります。

専門業者による洗浄や定期点検を実施することで、本来の性能を維持しやすくなります。設備を長く効率的に使用するためにも、定期的なメンテナンスが欠かせません。

空調の省エネをより効果的に進める5つのポイント

空調の省エネは、単発的な節電対策だけでは十分な効果を得られない場合があります。継続的に削減効果を出すためには、運用ルールの整備やデータ活用、自動制御などを組み合わせることが重要です。

ここでは、空調の省エネをより効果的に進める5つのポイントを解説します。

空調の省エネ効果を高めるポイント1:省エネ対策を現場任せにしない

設定温度の変更や清掃ルールだけでは、担当者によって運用にばらつきが生じることがあります。例えば、部署ごとに設定温度が異なっていたり、フィルター清掃の実施時期が担当者任せになっていたりすると、省エネ効果を安定して得ることは難しくなります。

そのため、設定温度の基準やメンテナンスの実施頻度、運転時間などをルール化し、組織として運用することが重要です。担当者が変わっても一定の運用を維持できるため、継続的な省エネにつながります。

継続的な省エネを実現するためには、属人的な運用から脱却することが重要です。

空調の省エネ効果を高めるポイント2:BEMSで空調運転を可視化する

空調の省エネを進めるには、電力使用量や設備の運転状況を把握することが重要です。そこで、建物内のエネルギー使用量を管理・可視化するシステムのBEMS(Building Energy Management System)を活用することで、省エネにつながる改善ポイントを見つけやすくなります。

例えば、「いつ」「どの設備が」「どの程度の電力を使用しているのか」を数値で把握し、無駄な運転やピーク時間帯を分析可能です。感覚ではなくデータをもとに改善できるため、効率的な省エネにつながります。

空調の省エネ効果を高めるポイント3:後付け制御で既存設備を活かす

既存の空調設備を引き続き使用できる場合は、設備を全面更新する前に、後付け制御の導入を検討する方法があります。

後付け制御とは、既存設備に制御機器やシステムを追加し、運転時間や出力などを調整することで、空調設備の運転を最適化する手法です。大規模な改修を伴わずに導入できるケースもあり、既存設備を活かしながら省エネを進められます。

設備更新と比べて初期投資や工事負担を抑えやすいため、設備の性能に大きな問題はないものの、運用面に改善余地がある場合に適した選択肢です。

空調の省エネ効果を高めるポイント4:AI制御で快適性と省エネを両立する

AI制御では、外気温や利用状況などのデータをもとに空調需要を予測し、自動で運転を最適化します。必要以上の冷暖房を抑えながら、室内の快適性を維持しやすいことが特徴です。

人手による細かな調整には限界があるため、継続的な最適運転を実現する手段として注目されています。

特に大型オフィスビルや商業施設など、空調設備が複雑な施設で効果を発揮しやすい手法です。一方、小規模施設では運用改善だけで十分な省エネ効果を得られる場合もあるため、施設規模や設備構成に応じた選択が重要です。

空調の省エネ効果を高めるポイント5:熱源設備と空調設備を一体で最適化する

大規模施設では、空調機単体ではなく熱源設備を含めた全体最適が重要です。熱源設備と空調設備を一体で制御することで、施設全体のエネルギー消費を効率的に削減できる可能性があります。

アラヤの「ConsciousAir」は、既存の空調設備に後付け導入できる空調最適化AIです。空調需要を予測し、空調設備の運転だけでなく、熱源設備と空調設備を一体で最適化することも可能です。

既存設備を活かしながら空調コストを削減したい方は、製品ページもあわせてご覧ください。

自社に合う空調省エネ対策の選び方

空調の省エネに取り組む際は、建物の規模や設備の状態に適した施策を選ぶことが重要です。

ここでは、コストや設備の状況に応じた空調省エネ対策の選び方を解説します。

コストを抑えるなら運用改善から始める

初期投資を抑えて省エネを進めたい場合は、設定温度の見直しやフィルター清掃などの運用改善から着手することが有効です。比較的短期間で取り組めるため、多くの企業で導入しやすい施策といえます。

まずは電力使用量や運転状況を確認し、自社で改善できるポイントを洗い出しましょう。小規模施設や予算をかけにくい企業に適した方法です。

既存設備を活かすなら後付け制御を検討する

空調設備が比較的新しく、大きな故障がない場合は、後付け制御による運用最適化が有効です。設備本体を更新する必要がないため、導入負荷を抑えられます。

設備の使用年数だけで判断するのではなく、保守状況や設備の性能を踏まえて、後付け制御と設備更新のどちらが適しているかを検討することが重要です。

設備更新よりも短期間で導入できるケースが多いこともメリットです。

設備更新が必要なケースを判断するには?

業務用エアコンを長期間使用している場合は、省エネ以前に故障リスクや維持費の増加が課題になります。頻繁な故障や部品供給の終了などが見られる場合は、設備更新を検討するタイミングです。

設備の使用年数だけでなく、保守履歴や運転状況を確認したうえで判断しましょう。

設備が使える場合は運用改善、限界を迎えている場合は設備更新という視点で整理することが重要です。

まとめ:自社に合った空調の省エネ対策で電気代削減を実現しよう

  • 空調は建物の電力消費の大きな割合を占めるため、省エネ効果が高い設備である
  • 設定温度の見直しやメンテナンスなど、今すぐ始められる対策も多い
  • 継続的な省エネには、運用改善だけでなく設備全体の最適化が重要である

空調は電力消費量が大きい設備であるため、運用方法や設備効率を見直すことで、電気代の削減効果を期待できます。設定温度の適正化や定期的なメンテナンスといった基本的な対策に加え、必要に応じて後付け制御やAI制御を取り入れることで、より継続的な省エネにつながります。

まずは、自社の空調設備の運転状況や電力使用量を確認し、運用改善で取り組めるポイントがないか整理してみましょう。

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株式会社アラヤ

先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
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AIアルゴリズム開発(ディープラーニング・エッジAI・自律AI)、建設DXソリューション、研究現場の業務効率化支援(Research DX)など、基礎研究から社会実装まで一貫して手がけています。