オフィスビルの空調省エネ対策7選|失敗を防ぐ3ステップの進め方も解説
2026.8.3 AI空調・省エネ最適化
電気料金の高騰を背景に、オフィスビルの空調設備の省エネに取り組む企業が増えています。一方、「どの対策から始めるべきかわからない」「節電によって従業員の快適性や生産性を損ないたくない」と悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。
空調の省エネは、設定温度の見直しやフィルター清掃といった運用改善から、BEMSやAIを活用した設備の最適化までさまざまな方法があります。省エネ効果を最大化するには、自社の空調方式や設備構成に合わせて適切な施策を選ぶことが重要です。
本記事では、オフィスビルで空調の省エネが重要な理由や具体的な対策、失敗なく進めるためのステップを解説します。
オフィスビルで空調の省エネが重要な理由

オフィスビルで空調の省エネを進める際は、空調が重視される理由や企業に求められる背景、建物ごとの空調方式を理解しておくことが重要です。
ここでは、対策を検討する前に押さえたい基本事項を解説します。
空調はオフィスビルの電力消費の大きな割合を占める
資源エネルギー庁の資料によると、一般的なオフィスビルにおける夏季17時頃の用途別電力消費比率は次のとおりです。
- 空調:48.6%
- 照明:23.1%
- 複合機:7.3%
- エレベーターなど:7.3%
- パソコン:6.6%
- その他:7.0%
参考:「夏季の省エネ・節電メニュー」(資源エネルギー庁)(https://www.tohoku.meti.go.jp/s_shigen_ene/topics/pdf/230622_4.pdf)
空調は電力消費全体の約半分を占めており、照明やOA機器などと比較しても割合が大きいことがわかります。そのため、オフィスビルの省エネを進める際は、空調設備を重点的に見直すことが有効です。
ただし、実際の電力消費割合は、建物の設備構成や利用状況、時間帯によって異なります。自社の電力データや設備状況を確認した上で、改善の優先順位を判断しましょうす。
省エネが求められる背景(電気料金・脱炭素・ESG)
空調は多くのオフィスビルで電力消費の大きな割合を占めるため、運用を見直すことは電気料金の削減に直結します。近年は電気料金の高騰が企業の固定費を押し上げており、空調の省エネはコスト管理の観点からも重要な課題です。
また、企業には脱炭素経営やESGへの対応も求められています。空調のエネルギー使用量を抑えることは、CO2排出量の削減や環境負荷の低減にもつながるため、設備運用を経営課題の一つとして捉える必要があります。
オフィスビルの空調方式によって実施できる省エネ対策は異なる
オフィスビルの空調は、主に「セントラル空調」と「個別空調」の2種類に分けられます。
空調方式によって管理できる範囲や実施しやすい省エネ対策が異なるため、まずは自社の設備構成を把握することが重要です。
| 項目 | セントラル空調 | 個別空調 |
|---|---|---|
| 特徴 | 建物全体を一括管理する | エリアごとに空調を管理する |
| 管理できる範囲 | 熱源設備を含めた全体最適化 | エリア単位で柔軟に調整可能 |
| 実施しやすい対策 | 熱源設備の最適化、AI制御、BEMS活用など | 設定温度や運転時間の見直し、ゾーン運転など |
| 向いている省エネ施策 | 建物全体のエネルギー管理 | 利用状況に応じた運用改善 |
このように、空調方式によって実施できる省エネ対策は異なります。自社の空調方式や管理範囲を確認した上で、適切な施策を選ぶことが重要です。
すぐに実践できるオフィスビルの空調省エネ対策

空調の省エネは、大規模な設備投資をおこなわなくても、日常の運用改善によって効果が得られる場合があります。
特に、設定温度や運転時間の見直し、フィルター清掃などは比較的取り組みやすく、多くのオフィスビルで実践可能です。まずは、自社で管理できる範囲の運用改善から着手しましょう。
空調の省エネ対策1:設定温度・運転時間・ゾーン運転を見直す
空調の省エネでは、設定温度だけでなく運転時間や運転エリアを最適化することが重要です。例えば、会議室や使用していないエリアの空調を停止したり、残業時間帯は必要なフロアだけを運転したりすることで、無駄な消費電力を抑えられます。
個別空調では、エリアごとに設定温度や運転時間を調整しやすく、利用状況に応じた運用改善が可能です。一方、セントラル空調では、建物管理者が運転スケジュールや対象エリアを見直すことで、建物全体の空調負荷を抑えられる場合があります。
利用状況に合わせた運転を意識することが省エネの第一歩です。
空調の省エネ対策2:フィルター清掃やブラインド活用など運用改善をおこなう
設備更新をおこなわなくても、日常的な管理を徹底することで空調の効率を改善できます。
フィルターが汚れていると風量が低下し、消費電力が増加するため、定期的な清掃が必要です。
また、窓際の日射をブラインドで遮ることで室内温度の上昇を抑えられます。室外機周辺の障害物を取り除くことも、効率的な運転につながります。
こうした日常的なメンテナンスを重ねることが、省エネ効果を高めるポイントです。
空調の省エネ対策3:温度ムラ・CO2濃度・換気を適切に管理する
空調の快適性は、設定温度だけで決まるものではありません。窓際の日射や人員の偏り、OA機器の発熱によって温度ムラが生じる場合があります。
また、室内のCO2濃度が高くなると、良好な室内環境を保つために外気の取り入れ量を増やす必要があります。一方、外気を必要以上に取り入れると、取り込んだ空気を冷暖房するための空調負荷が増加します。
そのため、CO2濃度を把握し、室内環境を維持できる範囲で外気導入量を調整することが重要です。設備のリニューアル時には、CO2センサーなどを用いた外気導入制御を導入することで、在室状況に応じて換気量を調整し、快適性を維持しながら空調エネルギーの削減につなげられます。
空調の省エネ対策4:時間帯に応じて空調を効率よく運転する
空調設備の運転が特定の時間帯に集中すると、消費電力や最大需要電力が増加する場合があります。そのため、在室状況や業務時間に合わせて運転スケジュールを見直すことが重要です。
例えば、始業前に複数の空調設備を一斉に起動すると電力需要が集中するため、起動時刻をずらす分散起動が有効です。また、残業時間帯は、在室者のいるフロアやエリアに限定して運転することで、利用されていない区画の消費電力を抑えられます。
終業前に空調を停止しても室温を維持できる場合は、停止時刻を前倒しする方法もあります。
ただし、快適性を損なわないよう、室温や在室状況を確認しながら調整することが重要です。時間帯ごとの利用状況に合わせて運転を最適化することで、消費電力量とピーク電力の抑制につながります。
中長期で実践したいオフィスビルの空調省エネ対策

運用改善だけでは削減効果に限界がある場合は、設備やシステムの活用を検討することも重要です。中長期的な視点で投資対効果を考えながら、自社に適した省エネ施策を選びましょう。
ここでは、オフィスビスの空調における中長期の省エネ対策を紹介します。
空調の省エネ対策5:BEMSで建物全体のエネルギーを管理する
BEMS(Building Energy Management System)とは、建物内のエネルギー使用状況を計測・可視化し、設備の運用を最適化するためのエネルギー管理システムです。空調や照明、換気設備などの使用状況を一元的に把握できるため、建物全体のエネルギー管理に活用されています。
BEMSを導入することで、設備ごとのエネルギー使用量や運転状況を確認できるため、どこに改善余地があるのかを判断しやすくなります。例えば、空調設備の稼働状況や電力使用量を分析し、設定値や運転時間の見直しにつなげることが可能です。
特に自社ビルでは、エネルギー管理の基盤として有効です。データに基づいて運用改善を進めることで、省エネ施策の優先順位を明確にし、継続的なエネルギー削減につなげられます。
空調の省エネ対策6:インバータ化・高効率設備へ更新する
既存設備の老朽化が進んでいる場合や、運用改善だけでは十分な効果を得られない場合は、インバータ化や高効率設備への更新を検討しましょう。
インバータ制御は、空調負荷に応じて出力を調整する仕組みで、必要以上の電力消費を抑えられます。また、高効率機器への更新により、省エネに加えて故障リスクや保守負担の低減も期待できます。
更新時は、導入費用だけでなく、設備の使用年数や保守費用、想定削減額を踏まえ、投資回収期間を確認することが重要です。
空調の省エネ対策7:AI空調制御で熱源設備と空調設備を最適化する
AI空調制御は、外気温や空調需要、過去の運転データなどをもとに、熱源設備と空調設備の運転を自動で最適化する技術です。
特に、次のような課題を抱えるオフィスビルに適しています。
- 空調の電気代が高い
- 建物全体の空調を一括管理している
- BEMSを導入しているが活用できていない
- 設備更新には大きなコストをかけたくない
このような場合は、AIによる運用最適化を検討することで、設備更新を行わずに省エネ効果を得られる可能性があります。
アラヤの「ConsciousAir」は、既存の空調設備に後付け導入できる空調最適化AIです。空調需要を予測し、熱源設備と空調設備を一体制御することで、快適性を維持しながら施設全体のエネルギー消費を最適化します。
既存設備を活用しながら省エネを実現したい企業にとって、有力な選択肢となるでしょう。詳しくはこちらのページをご覧ください。
オフィスビルの空調省エネで失敗しないための進め方3ステップ

オフィスビルにおける空調の省エネは、一度の対策で終わるものではありません。現状把握から効果検証、設備投資の検討までを段階的に進めることが重要です。
ここでは、空調の省エネで失敗しないための進め方を、3つのステップで解説します。
ステップ1:電力データと設備の現状を把握する
まずは、空調設備の構成や運転状況、エネルギー使用量を把握します。電気料金の明細やBEMSのデータから、月別・時間帯別の電力使用量やピーク電力を確認し、消費が集中している時間帯やエリアを特定しましょう。
あわせて、空調方式、設備の使用年数、設定温度、運転時間、メンテナンス状況などを整理します。現状を把握することで、運用改善を優先すべきか、設備更新を検討すべきかを判断しやすくなります。
ステップ2:運用改善から効果を検証する
現状を把握したら、設定温度や運転時間、運転エリアの見直しなど、設備投資を伴わない施策から実施します。一度に複数の条件を変更すると効果の要因を判断しにくいため、施策ごとに実施期間と評価指標を定めることが重要です。
改善前後の消費電力量やピーク電力を比較し、省エネ効果を定量的に確認します。その際は、外気温や稼働日数、在室人数などの条件も考慮し、単純な数値比較だけで効果を判断しないようにしましょう。
ステップ3:設備投資・AI活用を検討する
運用改善だけでは目標とする削減効果を得られない場合は、インバータ化や高効率設備への更新、BEMS・AI空調制御の導入を検討します。
導入判断では、初期費用だけでなく、年間のエネルギー削減額、保守費用、設備の残存使用期間、投資回収期間を比較することが重要です。
必要に応じて一部の設備やエリアで試験導入をおこない、効果を確認してから対象範囲を拡大することで投資リスクを抑えられます。
まとめ:自社に合った空調省エネ対策から始めよう
- オフィスビルでは、空調が電力消費の大きな割合を占めるため、省エネ効果が高い設備である
- 空調の省エネは、運用改善から設備更新、AI制御まで段階的に進めることが重要である
- 自社の設備構成や空調方式に合わせて最適な施策を選ぶことで、省エネ効果を最大化できる
オフィスビルの空調省エネは、設定温度の見直しなどの運用改善から、設備更新やAIを活用した最適化まで、建物の状況に応じてさまざまな施策があります。自社の空調方式や設備構成を踏まえて、無理なく継続できる対策を段階的に進めることが重要です。
まずは、自社オフィスの空調運用を確認してみましょう。設定温度や運転時間、フィルター清掃の状況など、すぐに見直せる項目から改善を始めることで、設備投資をしなくても省エネ効果が得られる場合があります。
株式会社アラヤ
先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
主な事業概要:
AIアルゴリズム開発(ディープラーニング・エッジAI・自律AI)、建設DXソリューション、研究現場の業務効率化支援(Research DX)など、基礎研究から社会実装まで一貫して手がけています。
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