「工場のCO2削減に取り組みたいものの、どの設備から見直すべきか分からない」「設備更新には大きな費用がかかるため、費用対効果を踏まえて検討したい」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
工場のCO2削減は、大規模な設備更新だけでなく、エネルギーの見える化や既存設備の運用改善によって進めることも可能です。
本記事では、工場でCO2削減が求められる背景やメリット、実践しやすい8つの対策、効果的に進めるポイントを解説します。
工場・製造業におけるCO2削減の現状と課題
工場・製造業では、CO2削減に向けて、エネルギーの見える化や設備の運用改善に取り組む企業が増えています。一方で、人材や予算、データ活用に課題を抱える企業も少なくありません。
まずは、製造業におけるCO2削減の現状を整理しましょう。
エネルギーの見える化に取り組む企業が増えている
省エネやCO2削減を効率的に進めるには、まず工場内で「どこで」「どれだけ」のエネルギーが使われているかを把握する必要があります。そのため、電力やガスなどの使用状況を可視化し、設備の運用改善や削減施策に活用する企業が増えています。
富士電機の2024年度調査によると、使用している指標で最も多かったのは「エネルギー使用量」で74.7%、次いで「CO2排出量」が57.6%、「エネルギーコスト」が48.7%でした。
こうしたデータを把握することで、改善すべき設備や工程を判断しやすくなります。エネルギー使用状況の可視化は、適切なCO2削減対策を検討するための重要な取り組みです。
設備更新だけでなく運用改善への取り組みも進んでいる
CO2削減は、高額な設備更新だけで実現するものではありません。
富士電機の2024年調査によると、エネルギーの見える化に取り組む工場のうち、43.7%がEMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入しています。EMSを活用することで、設備ごとのエネルギー使用量や稼働状況を可視化し、設備の運転を最適化できます。
エネルギー使用状況を把握することは、CO2削減に向けた運用改善を検討するうえで重要な取り組みといえるでしょう。
CO2削減を推進するための体制づくりが課題となっている
CO2削減を進めるうえで、多くの企業が予算の確保や社内体制の構築に課題を抱えています。
富士電機の省エネルギー対策に関する調査では、
- 必要な予算の確保(42.1%)
- 費用対効果がわかりにくい(32.3%)
- 従業員の理解・モチベーションが低い(31.8%)
- 推進できる人材不足(31.3%)
などが課題として挙げられました。
CO2削減を継続的に進めるには、設備を導入するだけでなく、投資対効果を検討しながら、社内の理解促進や推進体制を整えることが重要です。
出典:
富士電機株式会社「2024年調査 エネルギー見える化に取り組む製造業の現状と課題」(2026年7月19日取得)
富士電機株式会社「工場・プラントにおける省エネルギー対策に関する意識調査」(2026年7月19日取得)
工場でCO2削減が求められる背景
工場のCO2削減は、企業独自の取り組みではなく、国際的な脱炭素の流れや政府の政策、取引先企業からの要請を背景に重要性が高まっています。
ここでは、多くの製造業がCO2削減に取り組んでいる背景を整理します。
工場でCO2削減が求められる背景1:気候変動への対応が世界共通の課題となっている
気候変動への対応は、国際社会全体で取り組むべき課題となっています。1995年から国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開かれ、1997年の京都議定書や2015年のパリ協定を通じて、各国が温室効果ガスの削減に取り組む枠組みが整備されてきました。
パリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することが掲げられています。
こうした国際的な流れを背景に、企業にもCO2排出量の把握や削減への対応が求められています。
工場でCO2削減が求められる背景2:日本でも2050年カーボンニュートラルを目標としている
日本政府は、パリ協定の目標などを踏まえ、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。これは、2050年までに温室効果ガスの排出を全体として実質ゼロにを目指すものです。
さらに、2021年の地球温暖化対策推進法の改正により、2050年までの脱炭素社会の実現が基本理念として法律に位置づけられました。これを受けて、省エネや再生可能エネルギーの導入など、企業のCO2削減を後押しする政策や制度が進められています。
工場でCO2削減が求められる背景3:サプライチェーン全体でCO2削減が求められるようになった
近年は、自社が直接排出するCO2だけでなく、原材料の調達や輸送、製品の使用・廃棄などを含む、サプライチェーン全体の排出量を把握・削減する取り組みが重視されています。
サプライチェーン排出量には、自社の事業活動に関連する他社の間接排出であるScope3も含まれます。そのため、大企業が取引先に排出量データの提供や削減への協力を依頼するなど、企業間で連携して脱炭素を進める動きもみられるようになりました。
こうした動きは、部品や原材料を供給する中堅・中小の製造業にも無関係ではありません。取引先からの要請に備えるためにも、自社のCO2排出量を把握し、削減に取り組める体制を整えておく必要があります。
工場でCO2削減に取り組む3つのメリット
工場のCO2削減は、環境対応だけでなく、コスト削減や生産性の向上、企業価値の向上にもつながります。ここでは、工場がCO2削減に取り組むことで得られる主なメリットを3つ解説します。
メリット1:エネルギー使用量を最適化しコスト削減につながる
向上のCO2削減への取り組みは、エネルギー使用量の削減につながり、電気代や燃料費の削減効果も期待できます。工場では、生産設備や空調設備などが多くのエネルギーを消費しているため、運用改善や設備更新による削減効果は大きくなりやすいです。
エネルギー使用量を最適化することで、継続的なコスト削減にもつながるため、経営面でのメリットも大きいといえるでしょう。
メリット2:設備の安定稼働や製造品質の向上が期待できる
CO2削減への取り組みは、省エネに加え、設備の安定運転にも寄与します。例えば、過剰な運転を抑えることで設備への負荷が軽減され、故障リスクの低減や長寿命化が期待できます。
さらに、適切な運転管理は製造品質の安定にも有効です。設備の状態を把握しながら運用を最適化すれば、生産性の向上にもつながるでしょう。
メリット3:脱炭素経営への対応や企業価値向上につながる
CO2削減への取り組みは、企業の環境対応として社外からの評価にも影響する場合があります。ESG経営やサプライチェーン全体での脱炭素への対応が求められる中、CO2削減への取り組みは取引先や投資家からの評価につながる重要な要素です。
環境配慮を経営戦略の一つとして位置付けることで、将来的な企業価値の向上や競争力の強化にもつながるでしょう。
工場で実践できるCO2削減対策8選
工場のCO2削減には、設備更新だけでなく、既存設備の運用改善によって取り組める施策も数多くあります。重要なのは、自社の設備構成やエネルギー使用量に応じて、削減効果の高い施策を選択することです。
ここでは、工場で実践しやすい代表的なCO2削減対策を設備別に紹介します。
工場のCO2削減対策その1:エネルギー使用状況を見える化する
CO2削減を進める上で、まず取り組むべきなのがエネルギー使用状況の見える化です。
どの設備が多くのエネルギーを消費しているのかが分からなければ、効果的な対策を検討することはできません。電力使用量だけでなく、設備ごとの稼働状況や燃料使用量、CO2排出量を把握することで、改善余地の大きい設備を特定できます。
スマートメーターやエネルギー管理システムを活用してデータを収集する企業も増えています。
CO2削減を効率的に進めるためにも、自社工場のエネルギーの使い方を把握することから始めましょう。
工場のCO2削減対策その2:EMSを導入する
EMS(エネルギーマネジメントシステム)は、設備のエネルギー使用状況を一元管理し、運転を最適化するための仕組みです。設備ごとの消費エネルギーをリアルタイムで可視化し、異常値の検知や運転制御に活用できます。
例えば、生産量や稼働状況に応じて設備の運転を自動で調整することで、無駄なエネルギー消費を抑えられます。
設備更新を行わなくても、EMSによって運用改善の余地が見つかるケースは少なくありません。まだ導入していない場合は、自社設備にEMSを活用できるか確認してみるとよいでしょう。
工場のCO2削減対策その3:再生可能エネルギーを導入する
再生可能エネルギーの導入は、工場のCO2排出量を大きく削減できる対策の一つです。特に、自家消費型の太陽光発電やPPA(電力購入契約)の導入は、多くの企業で採用が進んでいます。
再生可能エネルギーは、エネルギー使用量を減らす施策ではなく、CO2排出係数の低い電力へ切り替える取り組みです。そのため、省エネ施策と組み合わせることで、より高い削減効果が期待できます。
工場の屋根面積や契約電力などを確認し、導入可能性を検討してみましょう。
工場のCO2削減対策その4:ボイラ・工業炉の燃料使用量を削減する
ボイラや工業炉は、工場の中でも多くの燃料を消費する設備であり、CO2排出量への影響も大きい設備です。燃焼効率の改善や排熱回収によって、燃料使用量を削減することがCO2削減につながります。
例えば、高効率ボイラへの更新や燃焼制御の最適化、排熱を再利用する設備の導入などが代表的な施策です。
エネルギー使用割合の高い設備だからこそ、改善効果も大きくなります。まずは、現在の燃料使用量や設備の運転状況を確認してみましょう。
工場のCO2削減対策その5:コンプレッサ・ポンプ・ファンを最適運転する
コンプレッサやポンプ、ファンは、工場の動力設備として多くの電力を消費しています。特に、必要以上の圧力設定や24時間稼働など、過剰な運転がおこなわれているケースも少なくありません。
そこで、インバータ制御の導入や運転条件の見直しによって、消費電力を削減できる場合があります。また、エア漏れ対策や配管の見直しも有効です。
小規模な改善でも大きな省エネ効果が得られる可能性があるため、自社設備の運転状況を定期的に確認することが重要です。
工場のCO2削減対策その6:空調設備の運用を最適化する
空調設備の運用を最適化することも、CO2削減に有効な対策です。
工場では、製造環境の維持や従業員の快適性のために空調設備が長時間稼働しているケースが多くあります。設定温度や運転時間の見直しに加え、熱源設備を含めた空調システム全体の運転を最適化することで、CO2の削減効果が期待できます。
近年は、AIを活用して空調需要を予測し、自動で運転を制御する取り組みも広がっています。工場内の温度や湿度、設備の稼働状況などをもとに空調設備を最適に制御することで、製造環境や快適性を維持しながら、消費電力の削減を図ることが可能です。
AIを活用した空調設備の省エネについて詳しく知りたい方は、アラヤが提供する既存の設備に後付けできる空調最適化AI「Conscious Air」の機能や実証実験例もご覧ください。
工場のCO2削減対策その7:照明設備を高効率化する
照明設備の高効率化は、比較的取り組みやすいCO2削減対策の一つです。
LED照明への更新はもちろん、人感センサーや照度センサーを活用することで、必要な場所に必要な時間だけ照明を使用できるようになります。
初期投資が比較的小さく、導入後すぐに電力使用量の削減効果を実感しやすい点もメリットです。照明設備の更新が進んでいる工場でも、ゾーニングや運用ルールの見直しによって改善できる場合があります。
工場のCO2削減対策その8:受変電設備・デマンド管理を見直す
受変電設備やデマンド管理の見直しは、工場全体のエネルギー使用を最適化するために重要な施策です。最大需要電力を抑制することで、電力コストの削減だけでなく、電力の無駄な使用を防ぐことにもつながります。
デマンド監視システムを活用してピーク電力の発生タイミングを把握し、設備の運転タイミングを調整することも可能です。
CO2削減を継続的に進めるには、設備単体だけでなく、工場全体のエネルギーマネジメントの視点を持つことが重要です。
工場のCO2削減を効果的に進めるポイント
工場のCO2削減は、設備を導入して終わりではなく、自社の状況に合わせて計画的に進めることが重要です。
ここでは、CO2削減を効果的に進めるために押さえておきたいポイントを解説します。
エネルギー使用状況を把握して優先順位を決める
CO2削減を効果的に進めるには、設備ごとのエネルギー使用状況を把握し、対策の優先順位を決めましょう。
工場では、ボイラやコンプレッサ、空調設備など、設備によってエネルギー使用量や改善余地が異なります。状況を把握しないまま対策を始めると、投資や作業に対して十分な削減効果を得られない可能性があります。
まずは、電力や燃料の使用量、稼働時間、生産量などを設備・工程別に確認しましょう。その上で、エネルギー使用量が多く、改善効果が見込める設備から対策を進めることで、限られた予算や人員を有効に活用できます。
投資対効果を試算して段階的に進める
設備投資を伴う施策は、投資対効果を試算しながら進めることが重要です。まずは運用改善から始め、その後に設備更新を検討するなど、段階的に進めることで無理なくCO2削減を実現できます。
特に工場のCO2削減では、設備ごとに削減効果や投資額が大きく異なります。例えば、照明のLED化は比較的少ない投資で導入できますが、ボイラの更新は多額の設備投資が必要になる場合があります。
導入コストと削減効果を比較しながら、段階的に進めることが重要です。
必要に応じて補助金・支援制度を活用する
CO2削減に関連する設備投資には、環境省のSHIFT事業や省エネ補助金などを活用できる場合があります。
設備更新やEMS導入の費用負担を軽減できるため、大規模な投資を検討している場合は事前に確認しておきましょう。補助金の内容や公募時期は毎年変わるため、最新情報を確認しながら活用を検討することが重要です。
継続的に改善する
CO2削減の効果を維持するには、対策後もエネルギー使用量を確認し、改善を続けることが重要です。
設備の稼働条件や生産量、季節によってエネルギーの使用状況は変化するため、一度設定を見直しただけでは、削減効果が低下する可能性があります。対策前後のデータを比較し、目標どおりの効果が得られているかを定期的に検証しましょう。
期待した成果が得られていない場合は、運転条件や実施方法を見直す必要があります。確認と改善をPDCAサイクルとして繰り返し、担当者や現場で情報を共有することで、CO2削減の取り組みを組織に定着させやすくなります。
まとめ:工場のCO2削減はデータに基づく継続的な改善が重要
- 工場のCO2削減は、見える化と運用改善を組み合わせて進めることが重要である
- エネルギー使用量の多い設備から優先的に対策をおこなうことで、効果を高められる
- 設備更新だけでなく、継続的な改善体制の構築が成果につながる
工場のCO2削減は、一時的な設備投資だけで実現できるものではありません。エネルギー使用状況を把握した上で、自社の設備や運用に適した対策を選び、継続的に改善を重ねることが、CO2削減とコスト削減の両立につながります。
まずは、自社工場でどの設備が多くのエネルギーを消費しているのかを把握し、CO2削減効果が大きい設備から対策を検討しましょう。
株式会社アラヤ
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