病院の省エネはどう取り組む?現場でできる5つの対策と進め方を解説

2026.5.13 AI空調・省エネ最適化

病院では、電気代やガス代の上昇により、省エネルギーを含む設備コストの見直しが重要な経営課題になっています。

一方、24時間稼働や衛生管理、患者さまへの配慮が必要なため、一般的な施設と同じ方法では省エネを進めにくい現実があります。また、「すでに照明のLED化は実施した」「設定温度の見直しも行っているが効果が頭打ち」と感じている施設も少なくありません。

病院の省エネは、一般的なオフィスビルとは異なり、診療継続・感染対策・患者さまの快適性を維持しながら進める必要があります。そのため、単純な節電ではなく、施設特性に合わせた改善視点が重要です。

本記事では、病院で省エネが重要な理由や現場で取り組みやすい5つの対策、実務で進めるための3ステップを解説します。

病院の省エネはなぜ重要?3つの理由を解説

まずは、病院で省エネが重要視される主な理由を3つに分けて解説します。

理由1:エネルギーコストの増加が経営を圧迫している

病院にとって、省エネは単なる節約にとどまらず、経営上の重要な課題の一つです。病院では、空調・照明・給湯・医療機器など多くの設備を日常的に稼働させるため、エネルギー使用量が大きくなりやすい傾向があります。

近年は燃料価格の変動や電力調達コスト上昇の影響で、法人向け電気料金の改定が続いています。エネルギー使用量の大きい病院では、料金単価の変動が経営コストへ直結しやすい状況です。

設備運用の見直しによって継続的に削減できるエネルギーコストは、改善余地の大きい領域です。病院の省エネは、施設管理と同時に経営改善のテーマでもあります。

理由2:24時間稼働・衛生基準により無駄が発生しやすい

病院は、構造上どうしても無駄が発生しやすい施設です。なぜなら、一般的なオフィスと異なり、夜間も含めて設備を止めにくいからです。

病室や救急部門では24時間対応が必要であり、手術室や処置室では温湿度や換気条件にも配慮しなければなりません。そのため、安全側の設定として強めの運転が続くことがあります。

また、病室、待合室、検査室、事務室、バックヤードでは必要な環境条件が異なります。それにもかかわらず一律の運転をしていると、必要以上の冷暖房や換気が発生しやすいです。

このように、病院は設備条件が複雑であるがゆえに、運用次第で大きな改善余地があります。

理由3:人手による運用管理では最適化に限界がある

病院の省エネが進みにくい理由の一つが、人手管理の限界です。設備担当者が日々調整していても、建物全体を常に最適化するのは容易ではありません。

外気温、時間帯、在院人数、部門ごとの利用状況など、負荷条件は常に変化します。そのたびに設定温度や機器台数を手動で調整するのは難しいでしょう。

結果として、担当者ごとの経験や勘に依存した運用になりやすく、属人化も起こります。継続的な改善を実現するには、人手だけに頼らない仕組みづくりが重要です。

病院で取り組める省エネ対策5選

病院の省エネには、日々の運用見直しで着手できる施策もあります。ここでは、現場で取り組みやすい代表的な対策を5つ紹介します。

病院の省エネ対策その1:照明のLED化

照明のLED化は、病院の省エネ対策の中でも着手しやすい施策です。消費電力を抑えやすく、交換前後の効果も比較しやすいため、多くの施設で導入されています。特に共用部やバックヤードなど点灯時間が長い場所では、削減効果を見込めます。

また、従来照明からLEDへ更新することで、消費電力の削減や交換頻度の低減が期待でき、維持管理負担の軽減にもつながるでしょう。

一方、すでにLED化が進んでいる病院では、追加効果は限定的です。病院全体の電力消費では空調の比率が大きいケースも多く、照明対策だけでは不十分な場合があります。

そのため、LED化は空調や熱源、換気など他の施策と組み合わせて進めることが重要です。

病院の省エネ対策その2:高効率空調機器・熱源設備への更新

老朽化した熱源機や空調機を高効率機器へ更新することで、運転効率が高まり、消費エネルギーを抑えやすくなります。

ただし、初期投資が大きく、工事調整が必要です。病院では診療への影響を避ける必要があり、停止できる時間帯も限られます。

そのため、更新効果は高い一方、実行には綿密な計画が求められます。省エネ効果だけでなく、修繕費削減や故障リスク低減も含めて中長期で投資対効果を検討することが重要です。

病院の省エネ対策その3:空調の設定温度・運転時間の見直し

設定温度や運転スケジュールの見直しは、すぐに始めやすい改善策です。不要な早朝運転や過剰な冷暖房を抑えることで、一定の削減効果が期待できます。

ただし、病院では部門ごとに条件が異なります。外来エリアと病棟、検査室では適切な環境が同じではありません。

一律の設定変更では不快感や運用トラブルにつながる可能性があるため、手動調整だけでなく、実態に合わせた制御が求められます。

病院の省エネ対策その4:換気・給湯設備の運用最適化

換気や給湯も、病院における省エネを検討する上で見逃せない負荷要因です。病院では衛生管理の観点から換気量を多めに設定しているケースがあり、運用実態によっては見直し余地があります。

また、給湯はボイラーや給湯設備を通じて、病室、厨房、浴室、洗浄設備など幅広い用途で使用されます。必要以上の加熱や循環が続いている場合は、改善余地があると考えられます。

ただし、感染対策や衛生基準との両立が前提です。そのため、単純に使用量を抑えるのではなく、安全性と運用条件を踏まえて最適化を図る必要があります。

病院の省エネ対策その5:BEMSによるエネルギーの見える化

BEMS(Building Energy Management System)とは、建物内の電力・空調・給湯などの使用状況を一元管理し、エネルギー運用を最適化するためのシステムです。設備別・時間帯別の使用傾向を可視化できるため、改善対象を見つけやすくなります。

例えば、夜間も稼働する病棟空調や換気設備の負荷状況、季節ごとに変化する空調エネルギーの使用傾向を確認できます。

一方で、見える化しただけでは削減にはつながりません。可視化データをもとに継続的に分析し、改善施策へつなげる運用体制まで整えることが省エネの成果を創出する鍵になります。

病院で省エネ対策を進める3ステップ

ここでは、病院で実行しやすい省エネ対策の進め方を3つのステップで解説します。

ステップ1:エネルギー使用状況を把握する

最初におこなうべきことは現状把握です。どの設備で、いつ、どれだけ使っているかが分からなければ改善は進みません。

電力データ、ガス使用量、BEMS情報、検針記録などを数値で整理し、主要設備の使用状況を確認しましょう。

ステップ2:改善余地の大きい領域を特定する

次に、見直しによる効果が期待しやすい領域を絞り込みます。病院では、空調・熱源がエネルギー使用量に占める比率が大きいケースも多く、優先的に見直しを検討すべき設備の一つです。

全体に広く手を出すより、負荷が大きい設備や時間帯から着手した方が成果につながりやすくなります。投資対効果も踏まえ、重点的に対策する領域を決めましょう。

ステップ3:運用改善と制御の高度化を進める

重点的に取り組む領域を特定したら、次は運用改善と制御の高度化を進める段階です。まずは設定温度や運転時間など、着手しやすい改善から始めます。

その上で、手動管理に限界がある場合は、自動制御や最適化の仕組みを検討します。継続的に成果を出すには、省エネの仕組み化まで進めることが重要です。

病院の省エネは「空調運用の最適化」が鍵になる

病院では、照明のLED化や基本的な節電施策をすでに実施している施設も多く、追加の省エネ効果を得にくくなっている場合があります。

その中で見直し余地が大きいのが、空調・熱源の運用です。設備更新に加えて、日々の運転方法を見直すことで、さらなる削減効果が期待できます。

ただし、病院では温湿度や換気条件に対する要求が厳しく、人手だけで最適な運転を継続することは容易ではありません。

ConsciousAirで既存設備の省エネを実現

そこで有効なのが、需要予測と自動制御を活用した運用最適化です。

既存設備を大きく更新せずに省エネを進めたい場合は、既存の空調設備やBEMSのデータを活かしながら運転を最適化できるConsciousAirの導入も選択肢の一つです。

アラヤが提供する空調最適化AIの「ConsciousAir」について、詳しくはサービスページをご覧ください。

まとめ:病院の省エネ効果を高めるには段階的な運用改善が重要

  • 病院の省エネは、コスト削減だけでなく経営改善や安定運営にもつながる取り組み
  • LED化に加え、空調・熱源・換気など負荷の大きい設備の見直しが効果的
  • 現状把握から優先順位付けをおこない、段階的に運用改善を進めることが重要

病院の省エネは、単発の節電施策だけで大きな効果を出すものではありません。施設全体の運用を見直し、負荷の大きい設備から優先的に改善していくことが重要です。

現状を把握し、自院に合った方法で無理なく進めることが成果につながります。

まずは、自院のエネルギー使用状況を整理し、空調の運転時間や設定温度の見直しなど、すぐに取り組める運用改善から着手してみましょう。

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株式会社アラヤ

先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
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