データセンターに空調は必要?4つの種類や選び方、負荷を軽減する方法を解説
2026.9.30 設備管理・システム解説
AIサーバーの増設によって発熱量や電気代が増え、空調設備をどう見直すべきか悩んでいる方もいるでしょう。
データセンターの空調は、機器の安定稼働を支える重要な設備です。ただし、冷却能力の増強には、施設の電力容量や工事費が関わります。
導入する際は、空調システムの特徴と選定基準を整理し、既存設備の負荷を軽減する方法も検討することが重要です。
本記事では、データセンターで空調が必要な理由や代表的な4種類、選び方、空調の負担を軽減する方法を解説します。
データセンターで空調が重要な理由

データセンターには、機器が発生する熱を取り除き、適切な温度・湿度を保つための空調が必要です。
サーバーやストレージ、ネットワーク機器から出る熱を十分に取り除けないと、機器の誤作動や故障につながります。状況によっては、システム停止やデータ消失など、運用に重大な影響を及ぼすおそれもあります。
特に、高性能なCPUやGPUを搭載したAIサーバーは、多くの電力を消費するとともに、大量の熱を発生させます。発熱量が増えると冷却に必要な電力も増え、サーバーと空調の両面で電気代の負担が大きくなりやすいです。
一方、空調設備を大幅に増強し、既存の受変電設備の容量を超える場合は、電力を受け入れる設備の見直しが必要です。条件によっては、特高(特別高圧)受変電設備への移行や大規模な改修が必要となり、初期費用と施工期間が課題になります。
データセンターの空調は、機器の安定稼働を守るとともに、限られた電力容量の中で運用コストを抑える観点からも検討することが重要です。
データセンターにおける空調システムの代表的な種類
代表的な空調システムとして、CRAC、CRAH、In-Row空調、フリークーリングがあります。それぞれの特徴は、次のとおりです。
| 種類 | 冷却の仕組み・特徴 |
|---|---|
| CRAC(コンピュータールームエアコン) | 冷媒で空気を冷やし、送風機で機器へ冷風を送る |
| CRAH(コンピュータールームエアハンドラー) | チラーで作った冷水で空気を冷やし、送風機で室内へ送る |
| In-Row空調 | ラック列内のラック間に設置し、発熱する機器の近くで空気を冷やして冷風を送る |
| フリークーリング | 外気の冷たさを直接または間接的に冷却へ利用する。外気温などの条件が合えば、冷却に使う電力を削減できる |
CRACとCRAHは主に「空気を冷やす仕組み」、In-Row空調は「空調機の設置位置」、フリークーリングは「外気を利用する冷却方法」を表しています。それぞれ区分の基準が異なり、組み合わせて採用される場合もあります。
データセンターの空調の種類1:CRAC(コンピュータールームエアコン)
CRACは、冷媒を使って空気を冷やす空調システムです。冷媒とは、熱を吸収したり放出したりする際、別の場所へ熱を運ぶために使う物質のことです。
冷媒によって空気から熱を取り除き、冷えた空気を送風機でデータセンター内の機器へ送り込みます。
データセンターの空調の種類2:CRAH(コンピュータールームエアハンドラー)
CRAHは、チラーで作った冷水を使って空気を冷やす空調システムです。チラーは、水などの液体から熱を取り除き、必要な温度に調整する装置です。空調設備や産業機械に冷却用の液体を供給する役割を担います。
CRAHを使う空調システムでは、チラーで冷やした水をCRAHへ送り、その水で室内の空気を冷やします。空気から熱を受け取った水はチラーに戻り、再び冷やされて循環する仕組みです。
CRACとの主な違いは、空気の冷却に冷媒を使うか、冷水を使うかという点です。いずれも冷やした空気を機器へ送りますが、その空気を作る仕組みが異なります。
データセンターの空調の種類3:In-Row空調
In-Row空調は、サーバーラック列内のラック間に設置し、発熱する機器の近くで空気を冷やして冷風を送る空調システムです。
機器の吸排気口に近い位置から冷風を届けられるため、高い冷却効果が期待できます。また、冷気を運ぶ距離が短くなり、送風に必要なエネルギーの削減にもつながります。
データセンターの空調の種類4:フリークーリングシステム
フリークーリングは、外気取り込み、冷却に利用する省エネ型のシステムです。
寒冷地や冬季など、外気温で冷却できる環境では、空調に必要な電力を大きく減らせる可能性があります。
ただし、利用できる条件は地域や季節によって異なります。導入を検討する際は、施設の立地や外気温の変化を踏まえ、どの時期に活用できるかを確認することが大切です。
データセンターにおける空調システムを選ぶ5つのポイント

空調システムを選ぶ際は、冷却能力だけでなく、可用性やエネルギー効率、コスト、拡張性を総合的に確認する必要があります。自社の運用条件に照らして、次の5点を比較しましょう。
データセンターの空調を選ぶポイント1:冷却能力
まず確認したいのは、現在の施設規模とサーバー密度に対応できる冷却能力があるかという点です。
限られたスペースにIT機器を高密度で設置すると、発熱が集中します。その発熱量に見合う冷却能力を確保しなければ、機器を十分に冷やせません。
「どの方式の空調を採用するか」に加えて、「現在の機器構成と発熱量に対応できるか」を確認することが重要です。施設の広さだけで判断せず、ラックへの機器の集積状況も含めて検討しましょう。
データセンターの空調を選ぶポイント2:トラブル・メンテナンス時の可用性
24時間365日稼働するデータセンターでは、空調の停止が機器の安定稼働に影響します。そのため、トラブルやメンテナンスの際も冷却を継続できるかが重要です。
確認したいのは、一部の空調機が故障しても必要な冷却を続けられる設備構成になっているか、点検や修理の際に運転への影響を抑えられるかという点です。
通常運転時の性能に加えて、故障や点検の際に冷却をどこまで継続できるか、停止時間を抑えられるかを確認しましょう。
データセンターの空調を選ぶポイント3:エネルギー効率
空調は多くの電力を使うため、長期的な運用コストを抑えるには、必要な冷却能力を確保しながら、少ない電力で運転できるかを確認することが重要です。
その際は、自社の立地や気候を活かして電力消費を抑えられるかも比較のポイントになります。
ただし、特定の方式があらゆる施設で最も省エネになるとは限りません。設置地域や運用条件を踏まえ、自社の環境で効率よく使えるかを検討しましょう。
データセンターの空調を選ぶポイント4:導入・運用に必要なコスト
データセンターの空調にかかるコストは、導入時の初期費用と、導入後の運用費用を合わせて判断することが大切です。
初期費用が安くても、運用時の電力消費が大きければ、長期的な負担が増える可能性があります。また、必要な冷却能力や故障時の対応に不足があれば、安定稼働に支障をきたすおそれがあります。
設備の価格に加え、必要な性能を維持するための費用を比較し、冷却能力・可用性・エネルギー効率・拡張性とのバランスを取りましょう。
データセンターの空調を選ぶポイント5:将来的な拡張性
空調設備は、将来の機器増設やフロア拡張に対応できるかも確認する必要があります。現在の負荷だけを基準に選ぶと、サーバーの増設時に空調設備の見直しが必要になる可能性があるためです。今後の施設拡張を見据え、冷却能力や設備構成を柔軟に変更できるかを検討しましょう。
増設予定を設備会社と共有し、現在必要な設備と、将来追加する可能性のある設備を整理しておくと、導入を進めやすくなります。
データセンターの空調負荷を軽減する4つの方法

データセンターの空調負荷を軽減するには、室内の温度分布や空調の電力使用状況を把握し、負担が大きい箇所を整理しましょう。
ここでは、空調を支える付帯設備・管理方法を4つ紹介します。
データセンターの空調負荷を軽減する方法1:二流体加湿器を導入する
空調の負荷を軽減する方法の一つは、二流体加湿器の導入です。加湿が必要な設備では、加湿方式の見直しが空調の負担軽減につながる可能性があります。
従来の蒸気式加湿器は、水を加熱して生成した蒸気を使って空気を加湿します。このとき、蒸気の熱も空気に加わります。一方、二流体加湿器は、水と圧縮空気を使って微細な霧を噴霧する仕組みです。水を加熱せずに加湿できるのが特徴です。
さらに、噴霧された細かな水滴が蒸発するときに、周囲の空気から熱を吸収するため、空気を冷やす効果があります。これにより、加湿と冷却を同時におこない、空調機の負担を軽減します。
ただし、効果は加湿の必要量や設備条件によって異なります。自社の湿度管理の状況に合わせて検討しましょう。
データセンターの空調負荷を軽減する方法2:室外機周辺の環境を整える
室外機の排熱環境を改善することも、空調の運転効率を保つうえで重要です。
室外機が集中している場所では、特に猛暑日に、排出した熱風を再び吸い込む「ショートサーキット」が起こりやすくなります。熱風の再吸い込みによって運転効率が低下すると、室内を冷やすための空調運転にも影響します。
対策として、室外機の熱風の再吸い込みを抑える専用設備を設置する方法があります。これにより、直射日光を遮りながら排熱を上方向へ調整可能です。
室内の温度管理とあわせて、室外機の周辺で熱風が滞留していないか、排熱が適切に流れているかも確認しましょう。
データセンターの空調負荷を軽減する方法3:気流管理を最適化する
冷却した空気をサーバーへ適切に届けるには、ラック内を含めた気流管理が重要です。
空調機の能力に加えて、サーバーラックも含めた気流管理をおこなうことで、熱だまりを減らし、空調負荷の低減につなげられます。
また、電力モニタリング機能を備えた電源分配装置を組み合わせることで、ラック側の電力使用状況を把握する方法もあります。
データセンターの空調負荷を軽減する方法4:DCIMを導入する
空調の負担を軽減する方法として、DCIM(Data Center Infrastructure Management)システムを導入する場合もあります。DCIMはデータセンターのインフラを管理するシステムのことで、IT危機や施設の設備を一元管理する仕組みです。
システムが収集した情報から、熱がこもる場所や電力の無駄が疑われる場所を把握し、空調設定を調整する判断に役立てられます。
管理情報を共有できれば、特定の担当者の経験に頼る運用を減らし、トラブルの早期発見にもつなげられます。
ただし、DCIMの導入だけで空調が自動的に最適化されるとは限りません。まずは自社のデータセンターの状態を確認し、データに基づいて運転を見直すための仕組みとして活用することが大切です。
AIやIoTを活用したデータセンターの空調制御が進んでいる
近年は、空調機そのものの効率向上に加えて、AIやIoTを活用した制御システムの導入が進んでいます。
例えば、IoTなどで設備の状態を収集し、そのデータをもとにAIが空調需要を予測します。必要な温度・湿度を保つように運転を調整し、無駄な電力消費を抑える考え方です。現状を把握するのに加えて、運転そのものを改善する方法といえます。
AIによる省エネでは、空調需要を予測し、その結果に応じて機器の運転を調整することが重要です。この予測と制御を組み合わせたシステムの一つが、アラヤの空調最適化AI「ConsciousAir(コンシャスエアー)」です。
予測AIが現場データから将来の空調需要を予測し、制御AIがエネルギー消費を抑える運転計画を立て、機器を制御します。
対応条件やサービスの詳細は、こちらのページをご覧ください。
まとめ|データセンターの空調は冷却能力と運用条件を踏まえて選ぼう
- データセンターの空調は、機器の安定稼働を守り、電力容量と運用コストを管理するうえで重要
- 空調システムを選ぶ際は、自社の運用条件に合ったものを選ぶことがポイント
- 二流体加湿器や室外機周辺の改善、気流管理、DCIMを活用すると、既存設備の負担を減らす方法も検討できる
データセンターの空調は、必要な冷却能力を確保しながら、運用コストとのバランスを考えて選ぶことが大切です。また、設備の増設だけでなく、既存設備の使い方や周辺環境を見直すことも負担の軽減につながります。
まずは、現在の空調方式とサーバー密度、今後の増設予定を設備担当者と確認するところから始めましょう。
株式会社アラヤ
先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
主な事業概要:
AIアルゴリズム開発(ディープラーニング・エッジAI・自律AI)、建設DXソリューション、研究現場の業務効率化支援(Research DX)など、基礎研究から社会実装まで一貫して手がけています。
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