クレーンのヒヤリハット事例7選まとめ|原因と対策を徹底解説

2026.9.29 安全管理・施工最適化

「クレーン作業で小さなヒヤリハットが報告されたものの、どのような対策が必要かわからない」と悩む現場責任者や作業者もいるのではないでしょうか。

ヒヤリハットを安全対策に生かすには、発生状況だけでなく、原因と対策をあわせて確認することが大切です。

本記事では、厚生労働省の資料をもとに、クレーンのヒヤリハット事例7選と、それぞれの発生状況・原因・対策を解説します。自社の作業に近い事例を参考に、作業方法や設備の見直しにつなげましょう。

クレーンの危険性と安全対策が必要な理由

クレーン作業では重量物を扱うため、小さな操作ミスや点検漏れが重大な事故につながる可能性があります。安全装置やルールを整備するだけでなく、点検・教育・情報共有を継続することが重要です。

例えば、工場や倉庫で使われる天井クレーンは、天井付近に設置されたレール上を走行し、重量物を垂直方向や水平方向へ移動させる設備です。この作業では、ワイヤロープの摩耗やフックの外れ止め装置の不具合、作業者と合図者の意思疎通不足などによって、つり荷が落下するおそれがあります。

つり荷の落下以外にも、電気が流れている部分への誤接触や絶縁不良による感電に注意が必要です。また、走行中のクレーンやつり荷との接触によって、作業者が挟まれるおそれもあります。

事故を防ぐための点検・教育・情報共有が欠かせない

こうした労働災害の背景には、「慣れ」「省略」「確認不足」といった人の判断や行動によるミスがあります。安全装置や作業ルールがあっても、「いつも通りだから大丈夫」という思い込みが事故につながりかねません。

クレーン作業の安全を守るには、設備の点検・整備と、合図や操作前の確認、異常時の停止方法に関する教育・訓練が重要です。ヒヤリハットの情報共有を継続し、事故の予防につなげましょう。

クレーンのヒヤリハット事例7選|原因と対策を解説

クレーンのヒヤリハットには、合図の不足や玉掛け方法の不備、設備の故障、誤操作など、さまざまな原因があります。ここでは、厚生労働省が公開している事例を紹介します。

各事例を朝礼やKY活動で共有するときは、発生状況を確認するだけで終わらせないことが大切です。自社の作業に近い事例から、同じ原因がないか、紹介する対策を実施できているか確認してみてください。

クレーンのヒヤリハット事例1:吊り上げ開始の合図が合わず、指を挟まれそうになった

資材置き場で、2人の作業員がクレーンを使ってケーシングを移動させていた際の事例です。1人がクレーンを操作し、もう1人がワイヤーで玉掛けを担当していました。

玉掛け担当者が手を放す直前に吊り上げが始まったため、指がワイヤーとケーシングの間に挟まれそうになりました。

    《原因》
    ・2人で作業するときの相互の声掛けが不十分だったこと

    《対策》
    ・作業中に相互の声掛けを頻繁におこなう
    ・吊り上げ開始時は、声だけでなく身振りや手振りでも合図する

参考:「作業員二人でクレーンを用いてケーシングの吊上げ作業中、吊上げ開始のタイミングが合わず、手の指をはさまれそうになった」(厚生労働省)(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/hiy_0404.html)

クレーンのヒヤリハット事例2:足場用鋼管の搬送中、介添えロープが抜けて転倒しそうになった

長尺の足場用鋼管を数十本まとめ、クレーンでつり上げて搬送していた時の事例です。荷が回転しそうになったため、作業者が介添えロープを引いたところ、ロープが抜け落ちて転倒しそうになりました。

    《原因》
    ・長尺のバラ物の玉掛け方法と介添えロープの取り付けに関する知識が不足していたこと
    ・バラ物が抜け落ちないように緊縛する玉掛け方法が取られていなかったこと
    ・荷の動きで緩みが生じる状態のつり荷に、介添えロープが巻き付けられていたこと

    《対策》
    ・長尺のバラ物は「あだまきつり」など、荷が抜け落ちない方法で玉掛けする
    ・介添えロープも荷へ緊縛する

参考:「クレーンで足場用鋼管を搬送中、転倒しそうになった」(厚生労働省)(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/hiy_0286.html)

クレーンのヒヤリハット事例3:移動式クレーンが転倒し、ジブが作業者に当たりそうになった

ビルの建設工事で、つり上げ荷重25トンの移動式クレーンを使い、鉄骨をつっていた時の事例です。荷下ろし場所で荷を下ろすため、ジブを伏せたところ、クレーンが転倒しました。

転倒したクレーンのジブが、作業者に当たりそうになりましたが、クレーンのオペレーターは逃げたため、けがはありませんでした。

    《原因》
    ・建設会社が鉄骨の重量を把握しながら、経費を抑えるため、必要な能力より小さなクレーンを使用したこと
    ・オペレーターが過負荷防止装置を無効化し、クレーンの能力を超える荷をつったこと

    《対策》
    ・元方事業場は、関係事業者が発注仕様より小さなクレーンを現場へ持ち込んでいないか確認する
    ・パトライトを確認し、過負荷防止装置が無効化されていないか確かめる

参考:「移動式クレーンの荷下ろしの際に、ジブを伏せたときにクレーンが転倒し、ジブが作業者に当たりそうになった」(厚生労働省)(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/hiy_0461.html)

クレーンのヒヤリハット事例4:天井クレーンの巻き上げが止まらず、鋼板が落下した

つり上げ荷重20トンの天井クレーンを、無線のペンダントスイッチで操作して鋼板を運搬していた際の例です。所定の位置でペンダントスイッチのボタンから指を放したものの、巻き上げが止まりませんでした。

その後、ワイヤロープが切れ、鋼板が落下しました。つり荷の下に作業者はいなかったため、被災者は出ていません。

    《原因》
    ・制御装置にある電磁開閉器の接点が固着したこと
    ・巻過防止装置の間接式リミットスイッチが固着していたこと
    ・巻過防止装置の直動式リミットスイッチが無効化されていたこと
    ・非常停止操作がおこなわれなかったこと

    《対策》
    ・クレーン等安全規則と定期自主検査指針に基づき、巻過防止装置や電磁接触器の接触子、継電器の接触片、コントローラ、操作用開閉器などを点検し、劣化した部分は交換する
    ・巻過防止装置を有効な状態で使用できるよう、点検・整備をおこなう
    ・定期自主検査を外部へ依頼する場合は、必要事項を具体的に指示し、実施結果を確認する
    ・非常停止操作を確実に行えるよう、定期的に訓練する

参考:「天井クレーンで鋼板を吊り上げ中、巻き上げが止まらず、ワイヤーロープが切れて鋼板が落下した」(厚生労働省)(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/hiy_0480.html)

クレーンのヒヤリハット事例5:巻き過ぎでワイヤロープが切れ、バッカンが立坑内へ落下した

鉄塔基礎部の立坑で、掘削した土砂を搬出していました。移動式クレーンで土砂の入ったバッカンを巻き上げたところ、巻き過ぎによってワイヤロープが切断されました。

バッカンは立坑内へ落下し、作業員にぶつかりそうになったケースがあります。

    《原因》
    ・巻過防止装置の電源を切った状態で巻き上げたこと
    ・巻過防止装置の点検をおこなっていなかったこと
    ・運転に必要な資格を持たない人に運転させたこと

    《対策》
    ・巻過防止装置を有効な状態で使用する
    ・使用前に巻過防止装置の作動状況を点検する
    ・必要な資格を持つ人を運転業務につかせる

参考:「クレーンのワイヤーロープが巻き過ぎによって切断され、土砂が入ったバッカンが立坑内に落下した」(厚生労働省)(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/hiy_0438.html)

クレーンのヒヤリハット事例6:クレーンでスクラップを積み込み中、貨物船でボヤが起きた

ふ頭に接岸した貨物船へ、クレーンでスクラップを積み込んでいた際の事例です。作業中に焦げた匂いに気づいたため、積載を中止しました。

その後、散水をおこなうとともに積荷を貨物船からふ頭へ戻したところ、しばらくして匂いの発生は収まりました。

    《原因》
    ・スクラップを金属類とプラスチック類に分別していなかったこと
    ・金属類に潤滑油類が付着していたこと
    ・積み込み時にスクラップを落下させ、その衝撃や摩擦によって火花が発生したこと

    《対策》
    ・潤滑油類などの引火性液体が混入したスクラップは、可燃物として扱う
    ・金属スクラップは衝撃や摩擦で火花が発生する可能性に留意する
    ・蓄熱による自然発火を避けるため、大量の貯蔵を避ける
    ・スクラップは収集・運搬の段階から品目別に分別する

参考:「貨物船にスクラップを積み込み中にボヤ」(厚生労働省)(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/hiy_0466.html)

クレーンのヒヤリハット事例7:橋形クレーンが風で動き、緩衝器に激突した

橋形クレーンを使った作業で、風がなかったため、アンカーを使用せずに昼休みに入った際のヒヤリハット事例です。その後、工場内で大きな音がしたため確認すると、クレーンが風にあおられて走行し、レール端部の緩衝器に激突して停止していました。

    《原因》
    ・昼休みに入る際、クレーンのアンカーを使用していなかったこと

    《対策》
    ・橋形クレーンを係留するときは、逸走防止措置を確実に講じる

参考:「橋形クレーンが風で逸走しそうになった」(厚生労働省)(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/hiyari/hiy_0469.html)

まとめ|クレーンのヒヤリハット事例を安全対策に生かそう

  • クレーン作業時に合図や声掛けが不足すると、吊り上げのタイミングがずれ、挟まれにつながるおそれがある
  • 玉掛け方法、安全装置、クレーン能力、操作方向などを作業前に確認することが重要
  • 点検中の表示や送信機のキー管理など、他者による誤操作を防ぐ仕組みも必要

クレーンのヒヤリハットは、重大事故につながる危険を事前に把握するための重要な情報です。発生状況だけでなく、ヒヤリハットの原因と対策を作業マニュアルに反映し、定期的な点検・メンテナンスや作業者への安全教育につなげることが大切です。

まずは、自社のクレーン作業に近い事例を1件選んでください。本記事と同じ原因がないか、事例に記載された対策を実施できているかを確認しましょう。

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株式会社アラヤ

先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
主な事業概要:
AIアルゴリズム開発(ディープラーニング・エッジAI・自律AI)、建設DXソリューション、研究現場の業務効率化支援(Research DX)など、基礎研究から社会実装まで一貫して手がけています。