空調の自動制御とは?仕組みやメリット、代表的な6つの制御方法を解説
2026.8.26 AI空調・省エネ最適化
大規模なオフィスビルでは、外気温、在室人数、時間帯によって必要な空調能力が変わります。設備管理者がすべての空調機を都度操作していると、管理の手間が増え、運転のばらつきも生じやすくなります。
そこで役立つのが、温度や湿度などの情報をもとに設備の運転を自動で調整する「空調の自動制御」です。すでに中央監視システムやBEMS(建物のエネルギー使用量を見える化・管理する仕組み)を使っている施設でも、どこまで自動で動いているかを整理すると、改善の手掛かりが見つかる場合があります。
本記事では、空調の自動制御の基本的な仕組み、メリット、代表的な6つの制御方法を分かりやすく解説します。既存設備を活用して運用を見直したい方は、参考にご覧ください。
空調の自動制御では何をするのか?

空調の自動制御とは、センサーなどで室内環境や設備の状態を把握し、その情報をもとに空調機器の運転を自動で調整する仕組みです。人がリモコンや操作盤で都度設定を変える手動運転とは異なり、設定値と実際の状態との差に応じて、設備側が継続して運転を変えます。
例えば、室温が設定値より高い場合は冷房能力や送風量を上げ、室温が設定値に近づけば、出力を抑えます。温度・湿度のほか、CO2濃度、在室状況、外気の条件、機器の稼働状態などを判断材料にすることもあります。
複数の空調機、熱源設備、換気設備を持つ施設では、すべてを人の判断だけで細かく調整するのは容易ではありません。自動制御は操作を完全になくすものではなく、設備管理者が設定値や運転方針を確認しながら、日常の微調整を仕組みで支えるものと考えるとよいでしょう。
空調の自動制御によるメリット

自動制御の目的は、単に操作を自動化することではありません。室内環境と設備の運転を継続的に整え、必要以上の運転を抑えることにあります。
ここでは、空調の自動制御による代表的なメリットを4つ紹介します。
快適な環境を維持できる
自動制御では、室温や湿度を継続的に計測し、設定値との差に応じて運転を調整できます。暑さや寒さを感じてから人が設定を変える場合と比べ、変化への対応が遅れにくい点が特徴です。
特に、エリアごとの温度や空調の負荷に応じて風量を変えられる方式の場合、会議室、執務室、共用部など利用状況が異なる空間にも対応しやすくなります。
快適性と省エネを両立する上で、一律に空調を弱めるのではなく、必要な場所に必要な能力を届けることが重要です。
省エネ効果が期待できる
空調の負荷は、外気温や在室人数、時間帯によって変化します。常に同じ能力で運転すると過剰運転につながるケースも珍しくありません。
自動制御では、温度やCO2濃度などの計測値に応じて、風量・出力・運転時間を調整します。負荷が小さい時間帯は出力を抑え、必要なときだけ能力を高めることで、快適性を保ちながら無駄なエネルギー消費を抑えやすくなります。
環境省の「令和4年度AI等のデジタル技術を活用した空調制御等最適化に関するCO2削減ポテンシャル調査等委託業務仕様書」によると、AI・IoT・各種センサーを活用して空調制御を最適化し、無駄なエネルギー消費を抑える取り組みは実用性が高いと示しています。
参考:「令和4年度AI等のデジタル技術を活用した空調制御等最適化に関するCO2削減ポテンシャル調査等委託業務仕様書」(環境省)(https://www.env.go.jp/kanbo/chotatsu/smart_kuuchou/3.%E5%88%A5%E6%B7%BB2_%E4%BB%95%E6%A7%98%E6%9B%B8.pdf)
空調の自動制御は、省エネとCO2削減を進める上でも重要な施策の一つです。
トラブルを早期に発見できる
自動制御システムでは、温度や機器の稼働状況を継続して記録・監視できます。対応するシステムであれば、通常と異なる状態を検知した際にアラートを出し、設備担当者が確認するきっかけをつくれます。
例えば、設定温度に対して室温がなかなか下がらない、特定の機器だけが長時間高い出力で動いている、といった状態です。このように通常と異なる状態が続いている場合は、データをもとに設備異常を発見しやすいです。
データだけで故障を断定することはできませんが、点検や保守会社への相談を早める材料になります。
空調機器の劣化を防ぎやすい
必要以上に高い出力で運転し続ける状態や、急な負荷変動を抑えられれば、機器への不要な負担を軽減しやすくなります。稼働状況をシステムに記録できる場合は、運転状態を見ながら点検・修理の計画を立てやすいでしょう。
ただし、自動制御を導入すれば機器の寿命が必ず延びるわけではありません。メーカーの点検基準に沿った定期点検、フィルター清掃、異常時の適切な対応と組み合わせることが重要です。
空調の自動制御がおこなわれる仕組み

実際の空調制御は、次の流れを繰り返しておこないます。
1. センサーが温度・湿度を感知
まず、センサーが温度や湿度などの室内環境を計測します。施設や目的に応じて、CO2濃度、在室状況、外気の温湿度、機器の稼働状態も取得し、空調を動かす上で必要な現状のデータを把握します。
2. 計測データを制御装置に送信
計測データは制御装置へ送られます。制御装置は、現在の値と設定温度・設定湿度などを比べ、どの程度の運転が必要かを判断します。
3. 設定値に近い環境へ調整
制御装置の判断結果に応じて、空調機器の出力や風量、バルブ・ダンパーの開度、換気量などを調整します。室温が設定値より高ければ冷房能力や風量を高め、近づけば出力を抑える、といった動きです。
空調の自動制御は一度調整して終わるのではなく、
- 計測: センサーで室温・湿度・CO2濃度など、現在の室内環境を確認する
- 判断: 計測値と設定温度を比べ、冷房や暖房をどの程度動かすか決める
- 制御: 判断結果に応じて、空調機の出力・風量・運転モードなどを調整する
- 再計測: 調整後の室温などを再び確認し、設定値に近づいたかを確かめる
を繰り返します。これにより、設備管理者が都度操作しなくても、環境の変化に合わせて空調の調整を続けられます。
空調の自動制御を実施する6つの方法

空調の自動制御には複数の方法があります。自社の設備構成や用途、利用時間、改善したい課題を踏まえて、単独または組み合わせで検討しましょう。
ここでは、代表的な6つの制御方法を紹介します。
空調の自動制御方法その1:デマンド制御
デマンド制御は、建物全体の電力使用量を監視し、あらかじめ決めた目標を超えないように空調の出力や運転を調整する方法です。電力のピークを抑えたい大規模施設で検討されます。
ただし、目標を低くしすぎると、設定温度に届かず暑さ・寒さを感じたり、湿度が十分に調整できず蒸し暑さや乾燥を感じたりするおそれがあります。利用状況やエリアごとの優先度を踏まえ、快適性を損なわない範囲で設定することが必要です。
空調の自動制御方法その2:VAV制御
VAV制御は、エリアごとの利用状況に差がある施設で、快適性と省エネの両立に役立ちます。これは、必要な場所に必要な量だけ送風し、使われていない場所への過剰な送風を抑えられるためです。
例えば、会議室で人が増えて室温が上がったときは風量を増やし、空室や利用者の少ないエリアでは風量を抑えます。
ただし、風量を下げる場合も、換気に必要な最低風量を下回らないように設定します。エリアごとに利用状況が異なる施設では、快適性と換気を両立するために有効な制御です。
空調の自動制御方法その3:外気冷房制御
外気冷房制御は、外の空気が室内より低温・低エンタルピー(空気に含まれる熱の量)であるときに、その空気を取り入れて冷房負荷を抑える方法です。
例えば、春・秋や夜間に外気が涼しく乾いている場合は、冷凍機などで空気を冷やす量を減らせます。一方、外気が高温・多湿の日や粉じんが多い環境では効果が見込みにくいため、温度だけでなく湿度・空気の状態・建物用途・必要な換気条件を確認した上での運用が欠かせません。
空調の自動制御方法その4:CO2濃度制御
CO2濃度制御は、室内のCO2濃度をセンサーで確認し、その値に応じて外気導入量を調整する方法です。
例えば、会議室に人が集まった際、CO2濃度が上がると外気を多く取り入れ、
人が少なくなってCO2濃度が低くなったときは必要以上の外気導入を抑える、といった運用です。
人数の変動が大きい会議室や多目的スペースで検討しやすく、空調にかかる負荷を抑えやすい点が特徴です。
空調の自動制御方法その5:人感制御
人感制御は、人の在室・不在を検知し、空調の運転や省エネ運転への切り替えをおこなう方法です。
例えば、会議室が一定時間使われていないときは設定温度を緩めたり、運転を停止したりします。人が入室すると通常の運転に戻すため、利用が不規則な会議室や休憩室に向いています。
ただし、座ったままの人を不在と誤って判断しないよう、停止までの時間や対象エリアを実際の使い方に合わせて設定することが重要です。
空調の自動制御方法その6:AIによる制御
AIによる制御は、既存の自動制御をすべて置き換えるものではなく、従来の制御方法と組み合わせることで、空調運用を高度化する方法です。
温度や圧力を一定に保つフィードバック制御、VAV制御、熱源の台数制御などが安定運転を担う一方、AIは過去の運転データ、気象情報、施設の利用状況から将来の空調負荷を予測し、設定値や運転計画を最適化します。
例えば、設定温度や送風量、起動・停止時刻、熱源の運転計画といった条件を既存の制御に与えることで、安定性と予測に基づく運用改善を組み合わせる考え方です。
AIによる空調自動制御なら「ConsciousAir」も選択肢の一つ
既存設備を活用して空調運用を高度化したい場合は、アラヤの「ConsciousAir」も選択肢の一つです。予測AIが将来の空調需要を予測し、制御AIがエネルギー消費を抑える運転計画を立て、機器制御までおこなう仕組みです。熱源設備と空調設備を一体で制御し、施設全体のエネルギー運用最適化を支援します。
大規模改修や追加センサーの取り付けは基本的に必要とせず、既存設備への後付けで導入可能です。
ConsciousAirについて、詳しくはこちらのページをご覧ください。
まとめ:空調の自動制御で運用改善を始めよう
- 空調の自動制御は、センサーで状態を計測し、制御装置が設定値に近づくよう機器を調整する仕組み
- 自動制御により快適性の維持や省エネ、異常の早期把握、機器への負担軽減が期待できる
- 目的に合わせてデマンド制御やVAV制御、外気冷房制御、CO2濃度制御、人感制御、AI制御など、制御方法を選ぶことが重要
これから空調の自動制御に取り組むには、まずは現在の空調設備が「何を計測し、どの機器を、どの条件で自動制御しているか」を中央監視システムや保守資料で確認しましょう。
設定温度、風量、外気量、運転時間のどこに改善余地があるかを整理することが、無理のない運用改善の第一歩です。
株式会社アラヤ
先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
主な事業概要:
AIアルゴリズム開発(ディープラーニング・エッジAI・自律AI)、建設DXソリューション、研究現場の業務効率化支援(Research DX)など、基礎研究から社会実装まで一貫して手がけています。
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