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ZEBの種類は4つ|それぞれの基準・特徴やZEB化に必要な技術を解説

本社や工場などの新築・改修にあたり、「ZEBの4種類は何が違うのか」「自社ではどの区分を目指せばよいのか」と悩んでいる方もいるでしょう。

ZEBは、省エネと再生可能エネルギーによる創エネを組み合わせ、年間のエネルギー収支ゼロを目指す建築物です。自社の建物でどの種類のZEBを目指すかを決めるには、各種類の削減基準と、建物の用途・規模に関する条件を確認することが大切です。

本記事では、ZEBの基本と4種類の区分の違い、ZEB化のメリット、必要な評価方法を解説します。

ZEBとは年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指す建築物のこと

ZEB(ゼブ)は「Net Zero Energy Building」の略称で、
快適な室内環境を保ちながら、省エネと再生可能エネルギーによる創エネを組み合わせ、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指す建築物です。

一次エネルギー消費量とは、電気やガスなどの使用量を、その供給に必要な石油・天然ガスなどのエネルギー量に換算したものです。異なるエネルギーを共通の尺度で比較するために使われます。

具体的には、まず高断熱化や自然採光・自然通風、高効率な空調・換気・照明・給湯設備などによって、必要なエネルギーを減らします。そのうえで、残る消費量を太陽光発電などで賄います。

ZEBが注目される理由

ZEBが注目される理由は、脱炭素社会の実現に向けて、建築物の省エネ性能を高めることが求められているためです。

地球温暖化対策の国際的な取り組みが進む中、日本は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。建築物で使うエネルギーを減らすことも、その実現に向けた重要な課題です。

国内では建築物省エネ法の改正が進み、2025年4月1日から、住宅・非住宅を問わず、原則すべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務づけられました。
参考:「令和7年4月1日から省エネ基準適合の全面義務化や構造関係規定の見直しなどが施行されます!!」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001001.html)

ただし、義務化されたのは省エネ基準への適合であり、すべての新築建築物にZEB取得が求められるわけではありません。ZEB化は、法令で求められる省エネ基準への適合に加え、さらに高い省エネ性能を目指す取り組みです。

ZEBとBELSの関係性

BELS(べルス)は、建築物の省エネ性能を第三者が評価・表示する制度で、ZEBの達成度を示すためにも使われます。「Building-Housing Energy-efficiency Labeling System」の略称で、日本語では「建築物省エネルギー性能表示制度」と呼ばれます。

BELSでは、建物のエネルギー消費性能を星の数で表示し、省エネ性能が高いほど星の数が多くなります。ただし、この星評価とZEBの区分は別の表示であり、星の数だけでZEBの種類が決まるわけではありません。

所定の要件を満たした場合は、評価結果をまとめた「BELS評価書」にZEB区分を表示できます。これにより、建物の所有者や利用者は、省エネ性能の高さと、ZEBのどの段階を達成しているかを確認可能です。

4種類のZEBと違いを解説

ZEBには『ZEB』「Nearly ZEB」「ZEB Ready」「ZEB Oriented」の4種類があります。それぞれ、一次エネルギー消費量の削減基準や、再生可能エネルギーの導入が必要かどうか、対象となる建物の規模・用途などが異なります。

まずは、4種類の基準と特徴を比較表で確認しましょう。

種類 基準 特徴
『ZEB』 再生可能エネルギーを除いて50%以上削減し、敷地内の再生可能エネルギーを含めて100%以上削減 年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスとなる建築物
Nearly ZEB 再生可能エネルギーを除いて50%以上削減し、敷地内の再生可能エネルギーを含めて75%以上100%未満削減 ZEB Readyの要件を満たし、創エネによって年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた建築物
ZEB Ready 再生可能エネルギーを除いて50%以上削減 『ZEB』を見据え、外皮の高断熱化と高効率な省エネ設備を備えた建築物
ZEB Oriented 延べ面積10,000㎡以上が対象。再生可能エネルギーを除いて用途別に30%または40%以上削減し、所定の未評価技術を導入 ZEB Readyを見据え、外皮の高性能化と高効率な省エネ設備に加え、さらなる省エネ措置を講じた建築物

削減率は、基準一次エネルギー消費量に対する一次エネルギー消費量の削減割合です。基準一次エネルギー消費量は、地域や建物の用途などに応じて定められる、標準的な建物のエネルギー消費量を指します。

ZEBの区分について、それぞれ解説します。

ZEBの種類その1:『ZEB』

『ZEB』は、年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロ、またはマイナスとなる建築物です。

基準一次エネルギー消費量に対し、再生可能エネルギーを除く省エネだけで50%以上削減し、敷地内の再生可能エネルギーを含めて100%以上削減することが要件です。

高断熱化や高効率設備によって消費量を減らし、残る消費量を太陽光発電などの創エネで賄います。なお、年間の収支で評価するため、常に外部からの電力供給が不要になるわけではありません。

ZEBの種類その2:Nearly ZEB

Nearly ZEBは、ZEB Readyの要件を満たし、創エネによって年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた建築物です。

基準一次エネルギー消費量に対し、

  • 再生可能エネルギーを除いて50%以上削減
  • 敷地内の再生可能エネルギーを含めて75%以上100%未満削減

することが要件です。

『ZEB』と同様に省エネと創エネを組み合わせますが、創エネを含む削減率が100%に達していない点が異なります。

ZEBの種類その3:ZEB Ready

ZEB Readyは、『ZEB』を見据え、外皮の高断熱化と高効率な省エネ設備を備えた建築物です。外皮とは、外壁・屋根・窓など、建物の内部と外部を隔てる部分を指します。

基準一次エネルギー消費量に対し、再生可能エネルギーを除いて一次エネルギー消費量を50%以上削減することが要件です。

なお、ZEB Readyでは、創エネの導入は必須ではありません。建物の断熱性能を高めて冷暖房に必要なエネルギーを減らし、空調や照明などの設備を高効率化することで、大幅な省エネを実現します。

ZEBの種類その4:ZEB Oriented

ZEB Orientedは、ZEB Readyを見据え、外皮の高性能化と高効率な省エネ設備に加え、さらなる省エネ措置を講じた建築物です。

対象は延べ面積10,000㎡以上の場合です。基準一次エネルギー消費量に対し、再生可能エネルギーを除いて、用途ごとに次の割合で一次エネルギー消費量を削減する必要があります。

  • 40%以上削減:事務所等、学校等、工場等
  • 30%以上削減:ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等

さらに、省エネ措置として、所定の「未評価技術」の導入が必要です。これは、省エネ計算プログラムのWEBPROでは現時点で評価されていないものの、省エネ効果が高いと見込まれ、空気調和・衛生工学会が公表した技術を指します。

創エネの導入は必須ではありませんが、建物の面積、用途別の削減率、未評価技術の導入という条件を満たす必要があります。

参考:「ZEBの定義」(環境省)(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html)

ZEB化のメリット

ZEB化には、光熱費の削減や快適性の向上、建物の価値向上、事業継続性の向上などのメリットがあります。ここでは、これらを経済・社会・環境の3つの側面から整理して解説します。

経済的メリット:光熱費と長期的な運用コストを抑えられる

ZEB化によって建物のエネルギー消費量を抑えると、運用にかかる光熱費の削減につながります。ただし、実際の削減効果は、建物の利用人数や運用条件などによって異なります。

また、環境・エネルギー性能の高い建物は、環境認証で高い評価を得やすく、不動産価値の向上も期待できます。

ZEB化を検討する際は、光熱費だけでなく、建物の価値への効果も含めて考えることが大切です。

社会的メリット:快適性や事業継続性の向上につながる

ZEB化は、室内の快適性を高めるとともに、災害時にも事業を続けるための備えにつながります。

ZEB化に向けた省エネ対策の一つが、外壁や窓などの断熱性能を高めることです。外部との熱の出入りを抑えることで、冷暖房に必要なエネルギーを減らしながら、室内の温度差や温度むらを小さくできます。自然採光や適切な空調・照明の制御も、省エネと快適な執務環境の両立に役立ちます。

また、こうした省エネ対策によって、建物の機能維持に必要なエネルギーを減らせることは、災害時の事業継続にも有効です。創エネ設備があれば、非常時に必要なエネルギーの一部を自給することも期待できます。

ただし、停電時に利用できる電力は、発電状況や設備の構成によって異なります。そのため、事業継続に必要な設備と電力量を整理し、停電時にも供給できるかを確認しておくことが大切です。

環境的メリット:CO2削減と企業の環境活動につながる

ZEB化は、建物のエネルギー消費に伴うCO2排出量の削減に貢献するとともに、企業の環境配慮への取り組みにもつながります。

化石燃料由来のエネルギーへの依存を減らすための具体的な取り組みは、次のとおりです。

  • 高効率設備などの導入によって、エネルギー消費を抑える
  • 太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用する

これらは、建物の脱炭素化を進め、地球温暖化対策に貢献する取り組みです。

また、環境・エネルギーに配慮した建物の活用も、企業の環境問題への取り組みの一つといえます。企業の環境配慮行動が評価される中、ZEBのような省エネ性能の高い建物を活用することは、企業評価や企業価値の向上につながる可能性があります。

参考:
「ZEBのメリット」(環境省)(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/03.html)
「ZEBを実現するための技術」(環境省)(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/06.html)
「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)について」(環境省)(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/zeb.html)

ZEB化を目指す上で欠かせない評価基準・技術要素

ZEB化に取り組むには、一次エネルギー消費量の評価方法を理解し、省エネ技術と再生可能エネルギー技術を適切に組み合わせることが必要です。

どの種類のZEBを目指すかを検討する際は、建物の用途や規模を確認することが大切です。例えば、ZEB Orientedは延べ面積10,000㎡以上が対象で、用途によって必要な一次エネルギー消費量の削減率が異なります。

目指す区分の基準を満たせるか判断するために、まずは削減率の計算方法を押さえましょう。

一次エネルギー消費量の削減率の計算方法

一次エネルギー消費量の削減率は、基準となる消費量と、設計した建物の消費量を比較することで求められます。計算の基本的な考え方は、次のとおりです。

削減率(%)=(基準一次エネルギー消費量 – 設計一次エネルギー消費量)÷ 基準一次エネルギー消費量 × 100(%)

※1:環境省「ZEBの定義」のBEIの説明をもとに、削減率の式として整理

《用語の意味》

  • 基準一次エネルギー消費量:地域や建物用途、室の使用条件などに応じて定められる基準値
  • 設計一次エネルギー消費量:建物の設計内容に基づき、省エネ計算で算出する値

ZEBの評価には、設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で割った「BEI」も用います。再生可能エネルギーを除くBEIが0.50なら、省エネによる削減率は50%です。

評価対象は、空調・換気・照明・給湯・昇降機です。家電やOA機器などの「その他一次エネルギー消費量」は除くため、建物全体で実際に使うエネルギーの削減率とは区別する必要があります。

また、省エネのみの削減率と、創エネを含む削減率は分けて確認します。実際の判定では、所定の計算プログラムで算出した削減率と、各区分の要件を照合することが必要です。

続いて、エネルギー消費量の削減に役立つ具体的な技術を紹介します。

省エネ技術(高断熱化、高効率設備、自然エネルギー)の導入

ZEB化では、まず建物が必要とするエネルギーを減らし、残る需要に対して効率の高い設備を使う流れが基本です。

環境省が紹介する技術をもとに、主な取り組みと役割を整理すると、次のようになります。

種類 基準 特徴
『ZEB』 再生可能エネルギーを除いて50%以上削減し、敷地内の再生可能エネルギーを含めて100%以上削減 年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスとなる建築物
Nearly ZEB 再生可能エネルギーを除いて50%以上削減し、敷地内の再生可能エネルギーを含めて75%以上100%未満削減 ZEB Readyの要件を満たし、創エネによって年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた建築物
ZEB Ready 再生可能エネルギーを除いて50%以上削減 『ZEB』を見据え、外皮の高断熱化と高効率な省エネ設備を備えた建築物
ZEB Oriented 延べ面積10,000㎡以上が対象。再生可能エネルギーを除いて用途別に30%または40%以上削減し、所定の未評価技術を導入 ZEB Readyを見据え、外皮の高性能化と高効率な省エネ設備に加え、さらなる省エネ措置を講じた建築物

BEMSは、建物のエネルギー使用状況などを計測し、見える化・分析・制御するシステムです。設備を導入するだけでなく、運用開始後もデータを確認し、使い方を調整することが大切です。

再生可能エネルギーの導入

ZEB化では、省エネ対策を進めたうえで、空調や照明などの運転に必要なエネルギーを、再生可能エネルギーによる「創エネ」で賄うことを検討します。

創エネの代表例は太陽光発電です。建物の屋上に発電設備を設置するほか、外壁や窓面に太陽電池を組み込み、発電した電力を建物内で利用する方法があります。

ZEB評価で対象となる再生可能エネルギーは、敷地内の設備によるものです。建物内で使う自家消費分に加え、使いきれずに売電する余剰分も含まれます。

創エネは『ZEB』とNearly ZEBの判定に関わりますが、ZEB ReadyとZEB Orientedでは必須条件ではありません。まず省エネによって消費量を減らし、目指す区分に応じて再生可能エネルギー設備の導入を検討しましょう。

参考:
「ZEBの定義」(環境省)(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html)(※1)
「ZEBを実現するための技術」(環境省)(https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/06.html)

ZEB化推進に向けた国の施策と動向

国は、省エネ基準への適合義務や補助事業などを通じて、建築物の省エネ化・ZEB化を後押ししています。ZEB化に関する設計や相談を支援する、ZEBプランナーの登録制度も設けられています。

ここでは、関連する法改正、補助金、専門家の支援制度を紹介します。具体的な計画や申請を進める際は、各省庁・制度運営者の最新情報を確認してください。

建築物省エネ法の改正と義務化

建築物省エネ法は、住宅や非住宅建築物の省エネ性能の向上を目的とする法律です。

2025年4月1日から、住宅・非住宅を問わず、原則すべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務づけられました。ただし、床面積10㎡以下の建築などは対象外です。(※1)

この改正で求められるのは、省エネ基準への適合であり、ZEB取得そのものではありません。法令への適合と、より高い省エネ性能を目指すZEB化は、区別して考える必要があります。

ZEB化を支援する補助金制度

環境省や経済産業省では、建築物のZEB化や、既存建築物の省エネ・省CO2改修などを支援する補助金制度を設けています。初期投資の負担を軽減するために、活用を検討したい支援策です。

支援内容は、目指すZEBの種類、新築・改修の別、建物の用途や規模などによって異なります。制度によっては、ZEB化に向けた調査・計画策定や設備導入などにかかる費用の一部が補助対象です。

制度名や補助率、上限額、対象要件、募集期間は年度や募集の時期によって変わります。資金計画を立てる段階で各省庁の最新公募情報を確認し、利用できる制度や対象経費、申請時期を把握しておくことが大切です。

ZEBプランナー制度の提供

ZEBプランナー制度は、ZEB化に関する相談窓口を持ち、設計やコンサルティングをおこなう事業者を登録・公表する制度です。一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が運用しています。

ZEB化を検討する建物の所有者と、専門知識を持つ事業者をつなぐことが制度の目的です。ZEBプランナーは、建築主からの問い合わせに対応し、ZEBの概要や具体的な事例を紹介するほか、依頼に応じて設計やコンサルティング業務をおこないます。

相談先を選ぶ際は、公表されている業務内容や実績を確認し、自社の計画に必要な支援を受けられるかを確かめましょう。計画の初期段階から相談することで、ZEB化の進め方を具体的に検討しやすくなります。

また、補助事業によっては、ZEBプランナーの関与が申請要件となる場合があります。補助金の活用を検討する際は、利用する制度の要件も併せて確認することが大切です。

参考:SIIウェブサイト|ZEBプランナー

まとめ|ZEBの種類ごとの違いを理解し、建物に合う目標を検討しよう

  • ZEBは、省エネと創エネを組み合わせて年間の一次エネルギー収支ゼロを目指す建築物のこと
  • ZEBの種類は『ZEB』・Nearly ZEB・ZEB Ready・ZEB Orientedの4つ
  • ZEB化に取り組む際は、評価方法を理解し、建物の条件に合う技術や支援制度を検討することが大切

ZEBの各区分では、一次エネルギー消費量の削減基準や創エネの必要性、建物の規模・用途に関する条件が異なります。

まずは、自社の建物の「用途」「延べ面積」「省エネ設備」「再エネ設備を設置できる場所」の4点を整理しましょう。これらを確認することが、目標とするZEBの種類を検討する第一歩になります。

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株式会社アラヤ

先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
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