空調設備は、多くの建物で電力消費の大きな割合を占めています。安定した環境維持や省エネを実現する上で、空調設備の運用は重要なテーマの一つです。
こうした空調の運用を支えている仕組みの一つが「計装」です。
計装とは、温度や湿度、圧力などを計測し、そのデータをもとに設備を自動制御するための技術や工事を指します。
しかし、設備管理の現場では「計装という言葉は知っているが、具体的に何をしているのかはよく分からない」というケースも少なくありません。また、電気工事との違いや、どのように業務用エアコンの省エネや運用改善につながるのかが整理できていない場合もあります。
本記事では、空調における計装の基本を整理します。計装の意味や電気工事との違い、主な計測項目、基本的な制御フローを解説しますので、ぜひご覧ください。
空調の計装とは?電気工事との違いも解説
ここでは、空調の計装とは何なのか、電気工事との違いと合わせて解説します。
空調の計装とは「最適な状態になるよう調整する技術・工事」のこと
計装とは、計測器を設備に装備し、設備を適切な状態に制御するための技術や工事を指します。言葉の由来は「計=計測」「装=装備」であり、温度や圧力などを測る計測器を設備に取り付けることが基本概念です。
ただし、計装の作業は”単にセンサーを設置すること”ではありません。
計測したデータを監視し、その情報をもとに設備を制御するまでを含めた仕組みを指します。
例えば商業ビルやオフィスビルなどの大規模施設では、空調を人の手で細かく操作することは現実的ではありません。そのため、温度や湿度などの状態を自動で監視し、必要に応じて設備を制御する仕組みが導入されています。
電気工事と計装工事の違い
電気工事と計装工事は、どちらも設備に関わる工事ですが役割が異なります。
まず、電気工事は主に電力を供給するための配線や設備の設置が中心です。建物に電気を届けたり、設備に電源を接続したりすることが主な目的です。
一方、計装工事は設備をどのように動かすかという「制御の仕組み」を構築することが目的です。センサーで状態を測定し、その情報をもとに設備を制御できるようにします。
主な違いを整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 主な役割 |
|---|---|
| 電気工事 | 電力供給、配線、電気設備の設置 |
| 計装工事 | 計測・監視・制御の仕組みを構築 |
このように計装は、電気設備とも空調設備とも関わる領域であり、電気と設備の中間に位置する専門領域ともいわれます。
そのため、設備トラブルや運用改善を検討する際には、「電気の問題なのか」「制御の問題なのか」を切り分けることが重要です。
例えば、設備が正常に動作しない場合でも、電源や配線の問題であれば電気工事の領域になります。一方、温度制御がうまく働かない場合などは、計装や制御設定に原因があるケースもあります。
空調計装では何を計測・制御している?計測項目・基本フローを確認しよう
ここからは、空調の計測における代表的な項目や基本のフローを解説します。
計測している代表項目(温度・湿度・圧力)
空調設備では、環境状態を把握するためにさまざまな項目を計測しています。代表的な計測項目は次のとおりです。
- 温度
- 湿度
- 圧力
- 流量
- CO2濃度
施設の用途によっては、水温や風量などを計測する場合もあります。
例えば、室内温度が設定温度より高くなれば冷房能力を上げる必要がありますが、設定温度に近づけば運転を抑えることが求められます。
また、湿度や圧力も空調の安定運転に関わる重要な要素です。これらの値を継続的に計測することで、建物内の環境を一定に保てるようになります。
このように、空調計装では設備の状態や環境条件を数値として把握しています。
基本のフローは3ステップでおこなわれる
空調の計装は、基本的に次の3つのステップで機能します。
- 計測(センサーで状態を取得)
- 監視(データを確認)
- 制御(設備を自動で調整)
例えば、室温が設定温度より高くなった場合を考えてみましょう。
- センサーが室温を計測する
- 監視システムが温度データを確認する
- 空調設備の冷房能力を上げる
このように、計測された情報をもとに設備が自動で調整されます。
また、大規模な商業ビルやオフィスビルでは、これらの計測データを中央監視システムで一元的に管理することもあります。 施設によっては、BEMS(Building Energy Management System)と連携し、建物全体の空調運転の最適化に活用されるケースもあります。
ただし、監視しているだけでは制御にはつながらない点に注意が必要です。データを確認するだけでは設備の運転は変わらず、そのデータが制御に反映されてはじめて、計装が本来の役割を果たします。
なぜ空調に計装が重要なのか?
空調における計装の役割は、大きく次の3つに整理できます。
- 安全性の確保
- 品質(快適性)の維持
- 省エネ・コスト削減
1つ目は、安全性の確保です。
温度や圧力などの値を継続的に監視することで、設備の異常を早期に把握しやすくなります。異常値を見逃しにくくなることで、故障対応の迅速化や事故リスクの低減につながります。
2つ目は、品質の維持です。
空調では、温度や湿度を一定範囲に保つことが、快適な室内環境の維持につながります。施設によっては、室圧や温湿度などに厳しい管理条件が求められる場合もあります。
3つ目は、省エネ・コスト削減です。
設備の状態を把握し、その時々の条件に応じて運転を調整することで、過剰な運転を抑えられる可能性があります。
その結果、無駄なエネルギー消費を抑え、運用コストの見直しにつながる場合があります。
計装が空調の自動制御・省エネにどう関わるか?
空調設備では、快適性を維持しながら無駄なエネルギー消費を抑えることが求められます。その前提となるのが、温度や湿度、圧力などを計測し、設備の運転に反映する計装です。
ここでは、計装が自動制御や省エネにどう関わるのかを整理します。
自動制御による環境維持
空調設備では、温度や湿度、圧力などの条件を一定範囲に維持することが求められます。
そのためには、設備の状態を継続的に計測し、それに応じて運転を調整する必要があります。
ここで重要になるのが計装です。計装によって環境状態を数値として把握できるため、自動制御が可能になります。
例えば室温が上昇した場合には冷房能力を上げ、設定温度に近づけば出力を抑えるといった調整がおこなわれます。
このような制御によって、建物内の環境を安定した状態に保ちやすいです。
ただし、精度の高い制御を実現するには、計測精度や制御設計などのノウハウも欠かせません。計装は単にデータを取得する仕組みではなく、空調の安定運用を支える自動制御の基盤といえます。
空調の計装が省エネにつながる理由
空調設備は、必要な能力が常に変動する設備です。外気温や在室人数、時間帯などによって、必要な冷暖房能力は変化します。
一定の運転を続けるだけでは過剰運転になりやすいため、計装によって温度や湿度、圧力などを常時計測することで、設備の状態を判断できます。
状態が把握できれば、「どの程度の能力が必要か」を判断可能です。
その上で、実測値と設定値の差に応じて設備を制御することで、次に挙げるような、必要な分だけ冷却・加熱・送風する運転が実現するでしょう。
- 設定温度に近づけば出力を抑える
- 温度差が大きければ能力を上げる
- 必要以上の送風を抑える
これにより、不要な連続フル運転を避けられる可能性があります。
計装を運用改善に生かす視点を持つことが大切
空調の運用改善を進めるには、計装データをどのように活用するかが重要です。特に次のポイントを確認することが役立ちます。
- 計測点は十分に設置されているか
- 監視だけでなく制御に反映されているか
- 設定値が実際の運用に合っているか
- 計装データを運用改善に活用できているか
これらを点検することで、設備運用の改善余地が見えやすいです。
空調の省エネや運用改善は、必ずしも設備更新だけで実現するものではありません。既存の計装を活用することでも、改善のきっかけが見つかる可能性があります。
そのため、まずは自社設備の計装状況を把握することから始めてみましょう。
まとめ:自社の空調計装を見直し、適切な運用改善の計画を立てよう
- 計装とは、温度や湿度などを計測し、そのデータをもとに空調設備を自動制御する仕組みである
- 空調では温度・湿度・圧力などを計測し、環境を一定に保つために制御が行われる
- 計装は安全性、快適性、省エネを支える空調運用の基盤となる
空調の運用改善を考える際は、設備そのものの更新だけでなく、既存の計装がどこまで機能しているかを見直すことも重要です。
何を計測し、そのデータが実際の制御に反映されているかを確認することで、自社設備の改善余地が見えやすくなります。
まずは、自社の空調で「何を計測し、そのデータを制御に生かせているか」を確認してみましょう。
株式会社アラヤ
先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
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