空調の電気代が高い理由とは?企業向けの削減方法を3つの視点で解説
2026.5.27 AI空調・省エネ最適化
複数店舗を管理する総務担当者や施設管理者にとって、空調の電気代は年々見過ごせないコストになっています。電気料金が上昇している昨今、「なぜこんなに高いのか」「どこから手をつければいいのか」と悩む声は少なくありません。
空調の電気代を削減するには、まず電気代が高くなる仕組みを理解し、自社の運用状況に合った対策を選ぶことが重要です。特に企業では、空調の使用量を減らすだけでなく、ピーク電力の抑制やエリアごとの運転最適化も意識する必要があります。
この記事では、空調の電気代の仕組みや計算方法を整理した上で、高くなる理由やつけっぱなし・こまめに切る場合の考え方、快適性を損なわずに電気代を削減する方法を解説します。
空調の電気代についての基礎知識

空調の電気代を適切に管理するには、電気代が決まる仕組みを理解することが重要です。
ここでは、電気料金の計算方法や業務用空調で使われる単位、企業が確認すべき料金項目について整理します。
空調の電気代は「消費電力量(kWh)×電力単価」で決まる
空調の電気代を理解するには、計算の仕組みを押さえることが重要です。
電気代は、次の計算式で求められます。
空調の電気代は、「どれくらいの電力を」「どれくらいの時間使ったか」によって決まります。業務用エアコンなどの空調設備では、運転時間や設定条件によって消費電力量が大きく変動します。
例えば、オフィスで業務用空調を運転した場合、次のようなイメージになります。
| 項目 | 数値例 |
|---|---|
| 空調の消費電力 | 10kW相当 |
| 1日の運転時間 | 10時間 |
| 月間稼働日数 | 22日 |
| 電力単価 | 30円/kWh |
この場合、月間の消費電力量は次のように計算できます。
次に、月間の消費電力量に電力単価30円/kWhを掛け、月あたりの電気代を出します。
この試算は1台あたりの金額です。実際の企業運用では、設置台数や稼働時間、稼働日数によって月間の電気代が大きく変動するため、まずは自社の運転条件に置き換えて試算することが重要です。
業務用空調でよく使われる単位(kW・kWh・COP・APF)とは
設備管理の現場でよく目にする単位を整理します。
- kW:瞬間的に消費できる電力の大きさを示す単位
- kWh:実際に使った電力量を示す単位
- COP:消費電力に対する冷暖房効率を示す指標
- APF:1年間を通じた運転効率を示す指標
設備選定時に確認するkWは空調の能力を示す数値であり、実際の電気代そのものを示すものではありません。同じ能力の空調でも、COPやAPFが異なれば、運転時に必要な電力は変わります。
そのため、電気代を削減するには、kWだけでなくほかの指標も確認し、自社の稼働パターンに合ったものを導入することが重要です。
企業が確認すべき電気代は「従量料金」と「基本料金」の2つ
毎月届く電気料金の請求書には、大きく分けて2種類の料金が含まれています。
- 従量料金:使った電力量に応じて変わる料金
- 基本料金:契約電力や最大需要電力(デマンド値)によって決まる料金
従量料金は、実際に使った電力量(kWh)に比例して変わる料金です。空調の運転時間を減らしたり、設定温度を適正化したりすることで直接削減できます。
基本料金は、契約電力または最大需要電力によって決まる固定的な料金です。業務用・高圧契約では、1年間のうちの最大デマンド(30分間の平均電力の最大値)が翌年の基本料金に影響するケースが多くあります。
節電施策では、使用量を減らすだけでなく、ピーク電力を抑えることも重要です。
空調の電気代削減は「現状把握」から始まる
「建物全体の電気代は把握しているものの、空調にどれだけ電力を使っているかまでは把握できていない」という企業も少なくありません。
空調は建物全体の電力消費割合が大きい設備ですが、照明・厨房機器・生産設備などと電力計測が分かれていないケースも多く、改善余地を判断しづらい状況があります。
そのため、まず空調ごとの消費電力量や運転状況を見える化することが重要です。
空調の電気代が高くなる理由

空調の電気代は、単純に「使いすぎ」だけで高くなるわけではありません。設定温度や運転方法、設備状態など、複数の要因が積み重なることで電気代が増加します。
ここでは、企業の現場で特に起こりやすい代表的な原因を整理します。
理由1:設定温度や運転時間が実態に合っていない
空調の電気代が高くなる要因の一つは、設定温度や運転時間が実態に合っていないことです。空間の冷やしすぎ・暖めすぎや、必要以上の長時間運転が該当します。
外気温と室内の設定温度の差が大きくなるほど、目標温度に到達するまでに必要なエネルギーが増え、消費電力が大きくなります。夏の猛暑日に設定温度を下げすぎると、フル稼働が続いて電気代が急上昇します。
また、実務の現場でよく起きるのが、停止し忘れや早すぎる立ち上げです。開店・始業の1〜2時間前から全台稼働させていたり、閉店後もバックヤードの空調が動いたままだったりするケースは少なくありません。
こうした「実態に合っていない運転の積み重ね」が、空調の電気代を押し上げています。
理由2:エリアごとの負荷差を考慮せず一律運転している
空調の電気代が高くなる理由には、すべてのエリアで一律の運転設定にしていることがあります。同じ建物・同じ店舗であっても、場所によって必要な空調の能力は大きく異なります。
例えば、小売店や商業施設では、エリアごとに空調負荷が異なります。
- 窓際の売場:日差しの影響で室温が上がりやすい
- レジ周辺・試着室:人が集まり、熱がこもりやすい
- 倉庫・バックヤード:人の出入りが少なく、強い冷暖房を必要としにくい
このような負荷差を考慮せず、全エリアを同じ設定で一律運転すると、不要な区画まで過剰に冷やす・暖める状態になり、電気代が増加しやすいです。「売場は暑いのにバックヤードは寒い」といった声がある場合、一律運転による負荷ミスマッチが起きている可能性があります。
理由3:設備効率の低下や属人的な運用を放置している
空調の電気代が高くなる理由には、設備効率の低下や属人的な運用を放置していることもあります。
空調設備は、メンテナンスが不十分だと、同じ冷暖房効果を出すために余計な電力を消費しやすいです。例えば、フィルターにほこりや小さなゴミが蓄積すると、空気を吸い込む力が低下します。その状態で運転を続けると、設定温度に近づけるために高出力の運転が必要になり、消費電力が増えやすくなります。
また、コンプレッサーや熱交換器の経年劣化が進むと、以前と同じ冷暖房能力を維持するために、より多くの電力が必要です。
さらに、担当者の経験や勘に頼って空調を管理していると、天候の変化や在室人数の増減に合わせた調整が遅れやすくなります。
こうした設備効率の低下や属人的な運用の積み重ねが、空調の電気代が高くなる原因になります。
空調は「つけっぱなし」「こまめに切る」のどちらを選ぶべきか?

空調の節電に取り組む際、「つけっぱなし」と「こまめなON/OFF」のどちらが良いか迷うケースは少なくありません。業務用空調では、使用時間や在室状況、空調の制御方式によって最適な運用方法が変わります。
ここでは、企業で空調を運用する際の考え方を整理します。
短時間の離席なら、こまめなON/OFFが逆効果になる場合もある
短時間の離席や一時的な外出であれば、こまめなON/OFFがかえって電気代を押し上げる場合があります。
空調は起動直後、室温を設定温度に近づけるために高出力で運転します。そのため、短時間でON/OFFを繰り返すと、立ち上げ時の負荷が増え、消費電力が大きくなりやすいです。
一方、夜間や休業日など、人がいない時間が長い場合は、空調を停止した方が電気代を抑えやすくなります。
企業では「切るかどうか」より運転スケジュール最適化が重要
「つけっぱなし」か「こまめに切る」かは一律に判断せず、使用時間・在室状況・エリアごとの利用実態に合わせて判断することが重要です。
実際の店舗や施設では、曜日・時間帯・外気温・在室人数などによって、最適な運転方法が変化します。これらを担当者の経験だけで毎日調整し続けるには限界があります。
そのため、企業における空調の運用では「切るかどうか」ではなく、使用状況に合わせて運転スケジュールを最適化することが重要です。
空調の電気代を節約する方法

空調の電気代を削減するには、単に使用量を減らすだけではなく、運転方法や設備状態を見直すことが重要です。
ここでは、快適性を維持しながら空調の電気代を抑える具体的な方法を解説します。
その1:設定温度・運転時間・ゾーニングを見直す
まず着手しやすいのは、現在の運転実態を見直すことです。具体的には、次の3つを確認しましょう。
- 設定温度の見直し:冷やしすぎ・暖めすぎになっていないか確認する
- 運転時間の見直し:開店・始業・閉店・退勤の実態に合わせて運転時間を調整する
- ゾーニングの見直し:用途や利用状況が異なるエリアごとに運転条件を分ける
設定温度については、環境省が推進する「デコ活」の取り組みであるクールビズ・ウォームビズで、夏の室温28度・冬の室温20度が推奨されています。
また、エアコン設定温度を1℃緩和した場合、冷房時で約13%、暖房時で約10%の消費電力量削減が見込まれます。ただし、実際の削減効果は建物規模・空調方式・外気温・在室人数などによって変動します。
小さな見直しでも、複数店舗・長期間で積み上げると、空調の電気代削減や省エネにも効果が期待できるでしょう。
▼出典:
「適切な室温管理について」(環境省)(https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/coolbiz/article/2020_action_detail_004.html)
「ウォームビズ(WARMBIZ)とは」(環境省)(https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/warmbiz/about/)
「エアコンの使い方について」(環境省)(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/energy/detail/06/)
その2:フィルター清掃・保守点検で設備効率を維持する
設備効率を維持するには、定期的なフィルター清掃と保守点検が重要です。
特にフィルターは汚れが蓄積しやすいため、月1〜2回を目安に状態を確認し、必要に応じて清掃を行いましょう。加えて、年1回程度の専門業者による点検を実施することで、不具合の早期発見にもつながります。
また、室外機周辺に障害物を置かない、直射日光による負荷を抑えるなど、設置環境を整えることも重要です。
こうした定期的なメンテナンスを行うことで、空調効率を維持しながら、電気代の増加や突発的な故障リスクを抑えやすくなります。
その3:既存設備のままAI制御で運転最適化する方法もある
設備更新以外の選択肢として、既存の空調にAI制御を後付けする方法もあります。
AI制御では、外気温や在室状況、電力使用量などのデータをもとに、空調の運転を自動で調整します。担当者が細かく設定を変更しなくても、状況に応じた運転をおこないやすくなる点が特徴です。
また、既存設備を活かして導入できるケースもあるため、大規模な設備更新が難しい企業でも検討しやすい方法です。空調の運用改善を継続的におこないたい場合は、AI制御のような仕組みを活用することも選択肢になります。
ConsciousAirなら既存空調を活かしながら電気代削減を目指せる
アラヤの空調最適化AIシステム「ConsciousAir」は、現在お使いの空調設備に後付けで導入できます。大規模な改修工事は不要で、既存設備をそのまま生かしながら運転の最適化が可能です。
AIが需要予測と運転制御を自動でおこない、快適性を維持しながら電力使用量とピーク電力の両方を抑制します。導入後も継続的に制御精度が改善されるため、長期的な削減効果が期待できます。また、個別空調の場合は、各空調機器の電力使用量を見える化する段階から支援可能です。
空調の電気代を削減したいと考えている方は、ConsciousAirのサービスページをご覧ください。
まとめ:空調の電気代対策は小さな見直しから始めよう
- 空調の電気代は「消費電力量×電力単価」で決まり、基本料金にはピーク電力も影響する
- 空調の電気代が高くなる主な原因は、運転設定・一律運転・設備効率低下の3つ
- 電気代削減には、設定温度や運転時間の見直しに加え、保守点検やAI制御の活用も有効
空調の電気代は、設備そのものだけでなく、日々の運転方法や管理体制によっても大きく変わります。特に企業では、複数店舗・長時間運転・人手不足などの影響で、気づかないうちにムダな運用が常態化しているケースも少なくありません。
まずは直近3か月分の電気料金明細と空調運転時間を確認し、自社の空調電気代に削減余地があるかを判断してください。現状の数字を把握することが、社内提案の第一歩になります。
株式会社アラヤ
先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
主な事業概要:
AIアルゴリズム開発(ディープラーニング・エッジAI・自律AI)、建設DXソリューション、研究現場の業務効率化支援(Research DX)など、基礎研究から社会実装まで一貫して手がけています。
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