CIMとは?土木現場への導入効果や導入方法、2つの活用事例を解説
2026.5.27 データ・シミュレーション活用
建設業界では、i-Constructionや建設DXの推進により、土木分野でも3次元データを活用した業務効率化が求められています。特に公共工事を中心にBIM/CIM活用が進む中で、「CIMとは何か」「導入するとどのような効果があるのか」と悩む担当者も多いのではないでしょうか。
CIMとは、主に土木分野で3次元モデルと属性情報を連携し、設計・施工・維持管理で活用する考え方です。CIMを活用することで、関係者間の情報共有や施工計画の精度向上、干渉確認、手戻り削減などにつなげやすくなります。
本記事では、土木現場におけるCIMの基本や導入効果、導入方法、実際の活用事例を解説します。
土木現場におけるCIMとは「3次元モデルと情報を連携し、活用する考え方」のこと

CIMとは、「Construction Information Modeling / Management」の略称です。
国土交通省の「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」では、3次元モデルに属性情報などを組み合わせ、調査・設計・施工・維持管理の各段階で情報を連携・活用することで、建設生産・管理システム全体の効率化・高度化を図る取り組みとして整理されています。
出典:「BIM/CIM 活用ガイドライン(案)」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/tec/content/001472848.pdf)
従来の土木業務では、2D図面や紙資料を中心に情報共有するケースが一般的でした。しかし、図面だけでは形状や施工条件を十分に把握しづらく、関係者間で認識ズレや情報分断が起こりやすい課題がありました。
CIMでは、3次元モデルに数量・材質・施工条件などの情報を持たせることで、関係者が同じ情報を共有しながら業務を進められます。そのためCIMは、単に立体図面を作成する3DCADではなく、施工計画や維持管理にも活用できる「情報活用の基盤」として位置付けられています。
CIMが誕生した背景
CIMが広がった背景には、建設業界の人手不足や生産性向上の必要性があります。
特に土木業界では、高齢化による技術継承の課題が深刻化しています。国土交通省によると、建設業就業者のうち55歳以上が35.9%を占める一方、29歳以下は11.7%にとどまっており、次世代への技術継承が課題とされています。
出典:「建設業を巡る現状と課題」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001610913.pdf)
また、複雑化する施工条件への対応も求められてきました。しかし、従来の図面中心業務では、設計・施工・維持管理の情報が分断されやすく、手戻りや確認工数が発生しやすい状況がありました。
こうした課題に対し、国土交通省はICT施工を含むi-Constructionを推進し、BIM/CIMの活用を広げています。3次元データを活用して情報共有や施工計画を高度化することは、人手不足や技術継承、手戻り削減といった建設業界の課題解決にもつながります。
CIMモデルとは何か
CIMモデルとは、3次元形状だけでなく、数量・材質・施工条件などの情報を持たせたデータモデルのことです。
例えば、土木構造物のモデルには、次のような情報を付与できます。
- 数量
- 材質
- 寸法
- 施工条件
- 点検履歴
- 補修履歴
従来の図面は、完成時点の形状を静的に表現するケースが一般的でした。一方、CIMモデルは、設計変更や施工状況に応じて情報を更新しながら活用できる点が特徴です。
そのため、CIMモデルは単なる3Dデータではなく、施工計画の検討や維持管理で情報共有をおこなうための基盤として活用されています。
BIMとCIMの違い
BIMとCIMは似た言葉ですが、主に対象分野が異なります。
- BIM:建築分野で活用されることが多く、主に建築物を対象とする
- CIM:土木分野で活用されることが多く、道路・橋梁・河川・トンネルなどの土木構造物を対象とする
また、CIMでは地形情報や線形情報、施工条件など、土木特有の情報を扱うケースが多い点も特徴です。
ただし、現在は国土交通省でも「BIM/CIM」という形で一体的に推進されています。そのため、「建築向け」「土木向け」という対象分野の違いとして理解すると整理しやすいでしょう。
土木現場へのCIM導入で得られる効果

CIMを導入することで、情報共有や施工計画の精度向上、手戻り削減などにつなげやすくなります。
ここでは、土木現場における代表的な導入効果を解説します。
効果1:図面だけでは伝わりにくい内容を可視化できる
CIMを導入すると、2D図面では把握しづらい内容を3次元で共有しやすくなります。
特に土木工事では、地形条件や構造物形状が複雑になるケースも多く、図面だけでは完成イメージや施工手順を把握しにくい場面があります。
CIMを活用すれば、施工ステップや構造物形状を3Dで確認できるため、関係者間の認識ズレを抑えやすいでしょう。さらに、完成イメージや工事内容を視覚的に示せるため、発注者説明や住民説明にも活用しやすいでしょう。
効果2:施工前に干渉や手戻りリスクを確認できる
CIMは、施工前の干渉確認にも有効です。重機配置や仮設構造物、既設設備との位置関係を事前確認することで、現場でのトラブルを減らしやすくなります。
従来は、現場に入ってから干渉や施工条件の問題に気づくケースもありました。しかし、CIMによって事前シミュレーションをおこなうことで、施工前の段階で課題を洗い出しやすくなります。
これにより、手戻りや工程遅延の防止に効果が期待できます。
効果3:数量算出や積算業務を効率化できる
CIMモデルに数量情報を持たせることで、数量算出や積算業務の効率化につながります。
従来は、図面をもとに部材や土量などを拾い出し、手作業で集計する必要がありました。そのため、拾い漏れや転記ミス、設計変更時の再集計に時間がかかるケースも少なくありません。
CIMを活用すれば、モデル上で部材や土量などの数量を確認できるため、設計変更が発生した場合も、変更内容を反映した数量を把握しやすくなります。
その結果、見積作成や原価管理に必要な情報を整理でき、積算業務の精度向上につながります。
効果4:施工計画や工程検討を具体化しやすくなる
CIMを活用すると、施工計画や工程検討を具体化しやすくなります。
重機配置、搬入導線、施工手順などを3次元上で確認できるため、図面だけでは把握しにくい現場条件を踏まえた検討が可能です。
施工前に課題を把握しやすくなることで、工程遅延や作業の手戻り防止にもつながります。
効果5:維持管理データとして将来活用しやすい
CIMは、施工時だけでなく、竣工後の維持管理にも活用できます。
例えば、橋梁や道路では、点検履歴・補修履歴・部材情報などをモデルと連携して管理できます。
これにより、過去の点検結果や補修状況を確認しやすくなり、劣化状況の把握や補修計画の検討に役立ちます。インフラの長寿命化が求められる中で、維持管理情報を一元化できる点は、CIMを活用する大きなメリットです。
土木現場へCIMを導入する基本の4ステップ

CIM導入では、単にソフトを導入するだけでなく、改善したい業務課題を整理した上で、段階的に活用範囲を広げることが重要です。
ここでは、土木現場へCIMを導入する際の基本的な進め方を解説します。
ステップ1:導入目的を明確にする
まずは、CIMの導入目的を整理しましょう。CIM導入そのものを目的化すると、モデル作成だけで終わる可能性があるためです。
- 手戻り削減
- 干渉確認の効率化
- 施工計画の高度化
- 発注者説明の効率化
のように、現場課題を起点に目的を決めることが重要です。
ステップ2:対象案件・業務を絞って小さく始める
CIMは、最初から全社規模で導入するのではなく、対象案件や業務を絞って始めることが重要です。
例えば、1案件・1工程・1部署など、活用範囲を限定することで、現場への負担を抑えながら導入効果を検証しやすくなります。
まずは施工計画の検討など、効果を確認しやすい業務から試験的に活用し、得られた知見をもとに適用範囲を広げていくと良いでしょう。
ステップ3:ソフト・体制・運用ルールを整える
CIMを継続的に活用するには、ソフトを導入するのに加えて、運用体制やルールを整えることが重要です。
例えば、次のような項目を事前に決めておく必要があります。
- 誰がモデルを更新・管理するか
- データをどこに保存するか
- ファイル名やフォルダ構成をどう統一するか
- 設計変更時の版管理をどうおこなうか
これらが曖昧なままだと、データの所在や最新版が分からず、現場で活用しにくくなってしまいます。ツール選定とあわせて、社内で運用しやすい管理体制を設計することが重要です。
ステップ4:成果を横展開し全社活用へ広げる
小規模導入で効果を確認できたら、他の案件や部署へ活用範囲を広げていきます。活用結果や改善点を社内で共有し、現場ごとの課題に合った運用方法へ調整することが欠かせません。
あわせて、教育体制や標準ルールを整備しておくと、特定の担当者に依存せず、継続的にCIMを活用しやすくなります。
CIMを一時的な施策で終わらせず、継続的な建設DXの取り組みとして定着させることが大切です。
土木現場におけるCIMの活用シーン2選

CIMは、設計や施工計画の高度化だけでなく、実際の現場運用でも活用が進んでいます。
ここでは、土木現場においてCIMがどのように活用されているのかを、アラヤの事例をもとに紹介します。
活用シーン1:橋梁工事の施工計画におけるクレーンシミュレーション
橋梁工事では、橋桁の吊り上げや架設などでクレーン作業が発生するため、吊荷経路や周辺構造物との干渉確認が重要です。
アラヤのクレーンシミュレーターでは、BIM/CIMデータや現場点群データを活用し、次のような検討を3次元上で実施できます。
- クレーン配置の検討
- 吊荷経路の確認
- 周辺構造物との干渉チェック
- 現場点群データを反映した施工条件の確認
実際にJFEエンジニアリング株式会社では、橋梁現場の計画検討シミュレーターとして導入されました。設計情報に加えて、現場で取得した点群データも反映できるため、日々変化する現場状況に応じた確認・検討に活用されています。
施工前に吊荷経路や干渉リスクを可視化できることで、施工計画や関係者間における情報共有の精度向上、手戻り防止が期待できます。
活用シーン2:都市部の狭小現場におけるクレーン作業計画
都市部工事では、道路幅や周辺建物、看板、街灯など、さまざまな制約条件があります。特に大型設備搬入では、わずかな計画ミスが事故や工程遅延につながるため、事前検証が欠かせません。
株式会社弘電社では、銀座の本社ビル屋上における大型受電設備更新工事で、アラヤのBIM/CIM連携クレーンシミュレーションソフト「ARACOM CRANE」を導入しました。
ARACOM CRANEでは、3Dモデルや点群データをもとに、次のような項目を事前検証できます。
- クレーン配置
- ブーム角度
- 搬送経路
- 周辺建物や街路設備との干渉リスク
限られた作業空間での干渉リスクを把握しやすくなるため、安全性と作業効率の両立につながります。実施工でも事前検証と同一手順で搬送を完了しており、施工計画の精度向上につながった事例です。
ARACOM CRANEについて、詳しくはサービスページをご覧ください。
まとめ:CIMを理解し土木現場の生産性向上につなげよう
- CIMは、主に土木現場で3次元モデルと情報を連携し、設計・施工・維持管理で活用する考え方である
- CIM導入によって、施工計画高度化や手戻り削減、生産性向上につながる可能性がある
- 橋梁工事や都市部工事では、クレーンシミュレーションなど具体的な活用も進んでいる
CIMは、単なる3Dモデル作成ではなく、土木現場の情報共有や施工計画を高度化する仕組みとして活用が進んでいます。特に、図面だけでは把握しにくい施工条件や干渉リスクを可視化できる点は、現場の安全性向上や手戻り削減に有効です。
まずは、直近の案件で「図面だけでは伝わりにくい業務」「事前検討に時間がかかる工程」がないかを整理し、CIM活用の第一歩を検討してはいかがでしょうか。
株式会社アラヤ
先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
主な事業概要:
AIアルゴリズム開発(ディープラーニング・エッジAI・自律AI)、建設DXソリューション、研究現場の業務効率化支援(Research DX)など、基礎研究から社会実装まで一貫して手がけています。
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