クレーンを扱う業務や安全教育の場面で、「どのような構造で動くのか」「各部品にはどのような役割があるのか」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。また、クレーンの図面を見て、部位名が分からず戸惑うこともあるでしょう。
クレーンは種類によって構造や動かし方が異なります。種類ごとに各部の名称と役割を確認すると、仕組みを理解しやすくなります。
本記事では、クレーンの定義と種類別の構造、巻上げ・横行・旋回・走行の仕組みを解説します。
クレーンとは「動力で荷をつり上げ、水平に運搬する機械装置」のこと
クレーンは、動力で荷をつり上げ、水平方向へ運搬する機械装置です。基本的な機能は、次の2つです。
- 動力を使って荷をつり上げる
- つり上げた荷を水平方向へ運搬する
水平方向への運搬には、人力でおこなうものも含まれます。一方、荷をつり上げるだけの装置や、人力で荷をつり上げる装置は、ここでいうクレーンには含まれません。
クレーンは、荷をつり上げる装置、水平に移動させる装置、それらと荷重を支える構造などから成り立っています。具体的な部位や動作の組み合わせは、種類によって異なります。
【種類別】クレーンの構造と動く仕組みを解説
ここでは、代表的な固定式クレーンと移動式クレーンについて、それぞれの構造と動く仕組みを解説します。
代表的な固定式クレーン(天井クレーン・橋形クレーン・ジブクレーン)
床上から操作されるクレーンの代表例として、天井クレーン、橋形クレーン、ジブクレーンがあります。
天井クレーン
天井クレーンは、建物の両側の壁などに沿って設けた「ランウェイ」上を、橋状の本体が移動するクレーンです。屋外に設置されていても、同じ構造や形状であれば天井クレーンに分類されます。
天井クレーンの主な動きは、次の3つです。
- 巻上げ・巻下げ:フックやつり具を上下させる
- 横行:トロリをガーダに沿って移動させる
- 走行:クレーン本体をランウェイに沿って移動させる
横行と走行を組み合わせることで、ガーダの下に広がる範囲へ荷を運搬する仕組みです。
横行部分には、電気ホイストを使うホイスト式と、巻上装置を備えたトロリを使うトロリ式があります。トロリ式は、トロリの構造によってさらに細かく分類されます。
橋形クレーン
橋形クレーンは、天井クレーンのガーダ両端に脚を設けた構造です。地上または床上に敷設された走行レールの上を、門のような形をした本体が移動します。
荷の上げ下ろしには巻上装置を使います。横行部分の基本的な仕組みは天井クレーンと同様で、ホイストやトロリがガーダに沿って移動します。
一方、橋形クレーンでは、ガーダを支える脚と地上側の走行レールを備えている点が天井クレーンとの違いです。クレーン本体がレール上を走行することで、屋外の工場やふ頭などの広い範囲へ荷を運搬できます。
トロリの代わりに、旋回できるマントロリやジブクレーン、引込みクレーンを載せた形式もあります。
走行レールの外側までガーダを張り出した部分は「カンチレバー」です。カンチレバーにより、脚や走行レールの外側まで作業範囲を広げられます。
ジブクレーン
ジブクレーンは、荷をつるための腕状部材「ジブ」を備えたクレーンです。形式に応じて、荷の上げ下げ、ジブの起伏・旋回、トロリの横行、本体の走行などを組み合わせます。
ジブの支え方や本体の構造によって、次のような形式があります。
- 低床ジブクレーン: 基礎上や走行台車上の旋回レールに、旋回体を載せた構造。
- 高脚・片脚ジブクレーン: 高脚形は脚のある架構上に旋回部分を設け、脚の間を車両などが通れる構造。片脚形は一方の走行レールを建物側などに設置。
- 塔形・クライミング式ジブクレーン: 塔形は高い塔の上に起伏するジブを備え、クライミング装置を持たない形式。クライミング式は必要に応じてマストを継ぎ足し、旋回体を上昇させられる形式。
- ポスト形ジブクレーン: 固定した柱の周囲を旋回体が回る構造。
- つち形クレーン: 塔の上に水平なジブを設け、そのジブに沿ってトロリが横行する構造。
- 引込みクレーン: ジブを起伏させても、つり荷がほぼ水平に移動するよう工夫された構造。
- 壁クレーン: 建物の柱や壁に取り付けた水平ジブに沿って、トロリが横行する構造。トロリを設けず、ジブ先端から直接荷をつるものもある。
代表的な移動式クレーン
移動式クレーンは、車台や専用キャリヤ、クローラ式走行装置などにクレーン装置を搭載し、必要な場所へ移動して作業します。
形式によって移動方法や運転室・エンジンの配置、ブームの構造、車体の支え方が異なるため、代表的な種類ごとに解説します。
ホイールクレーン
ホイールクレーンは、タイヤ付きの車軸で支えた専用フレームに、クレーン装置を搭載した移動式クレーンです。クローラ式とは足回りが異なり、車輪で走行します。
主な構造上の特徴は、次のとおりです。
- 操作部・足回り:一つの運転室で走行とクレーン操作を行い、3輪式や4輪式がある。
- 車体の支持:アウトリガーを備える形式のほか、前輪タイヤの外側に取り付けた鉄輪が接地し、安定性を高める形式もある。
ホイールクレーンには、次に紹介するラフテレーンクレーンも含まれます。一方、トラッククレーンは別の種類に分類され、走行用とクレーン操作用の運転室をそれぞれ備えています。
ラフテレーンクレーン
ラフテレーンクレーンは、専用キャリヤにクレーン装置と、筒状の部材が伸縮する「テレスコピックブーム」を搭載した形式です。走行とクレーン作業を一つの運転室で操作し、エンジン搭載機では動力源も共用します。
主な構造と動きは、次のとおりです。
- 上部本体: ブームやウインチ、後方のカウンタウェイトなどを備え、360度旋回。
- ブーム: 油圧シリンダで起伏。伸縮方式は機種によって異なり、油圧シリンダとワイヤロープを組み合わせる方式などがある。
- 車体の支持: 作業時にアウトリガーを張り出して車体を安定させる。
比較的コンパクトで、狭い場所へ入りやすい点が特徴です。ただし、作業方向による能力の違いや、地盤の状態を確認する必要があります。
トラッククレーン
トラッククレーンは、トラックのシャシや専用キャリヤに、クレーン装置とブームを搭載した形式です。道路を走行でき、現場間を移動しやすい点が特徴です。
代表的な構造は、次のとおりです。
- 運転室: 走行用をキャリヤ側、クレーン作業用を上部本体側に配置。
- エンジン: 走行用とクレーン作業用を別々に備える形式と、走行用の動力をクレーン作業にも利用する形式がある。
- 荷の移動: 上部本体の旋回と、ブーム・巻上装置の動きを組み合わせる。
- 車体の支持: 作業時はアウトリガーを使用。
ブームには、油圧で伸縮するテレスコピック式や、鋼材を格子状に組んだラチス式があります。
積載形トラッククレーン
積載形トラッククレーンは、主にトラックの運転室と荷台の間に、小型のクレーン装置を搭載した車両です。荷物の運搬と、荷台への積込み・荷下ろしを1台で行えます。
車両のエンジンで油圧ポンプを動かし、操作装置で作動油の流れを調整することで、ブームの伸縮・起伏・旋回などをおこないます。通常はクレーン作業専用の運転室を設けず、車両側方の操作装置やリモコンなどで操作します。
クローラクレーン
クローラクレーンは、クローラ式走行装置の上にクレーン装置を搭載した形式です。格子状のラチスブームが代表的ですが、伸縮式のテレスコピックブームを備える機種もあります。
油圧式のクローラクレーンの主な構造と動きは、次のとおりです。
- 上部本体: エンジンや油圧ポンプ、運転室などを備え、足回りの上で360度旋回。
- 駆動の仕組み: 油圧により、巻上げ・巻下げ、ブームの起伏、旋回、走行をおこなう。
- 足回り: 接地面積が広く、ホイール式より接地圧を小さくしやすい構造。
公道は自走できないため、現場間の移動にはトレーラーなどを使います。大型機では、分解して輸送し、現場で組み立てます。
クレーンの構造を支える主要な関連パーツ
前章では、クレーンの種類ごとの構造と動きを紹介しました。ここでは、図面や現場の説明で使われる部位名と、各パーツの役割を整理します。
荷をつり上げて移動させるパーツ
荷を支えて作業範囲に関わるジブ、荷を上下させるホイスト、水平方向へ運ぶトロリについて解説します。
ジブ(ブーム・アーム)
ジブは、本体から突き出して荷を支える腕状の部材です。「ブーム」「アーム」と呼ばれる場合もありますが、機種によってはブームとジブを別部材として区別します。
形式に応じて、角度を変える「起伏」、長さを変える「伸縮」、向きを変える「旋回」により、荷を扱う高さや範囲を変えます。
構造の例には、クローラクレーンで多い格子状のラチスブームと、ラフテレーンクレーンで使われる伸縮式のテレスコピックブームがあります。
ホイスト
ホイストは、ロープやチェーンを巻き取り、荷を上下させる巻上装置です。電気式・エア式・油圧式などの動力式のほか、人力式もあります。
ホイスト式天井クレーンでは、電気チェーンブロックや電気ワイヤロープホイストを横行用のトロリと組み合わせます。基本的には、ホイストが垂直移動、トロリが水平移動を担います。
トロリ
トロリは、ガーダやI形鋼などの軌道に沿って横行し、つり荷を水平方向へ運ぶ装置です。天井クレーンや橋形クレーンなどで使われます。
代表的なトロリの形式は、次のとおりです。
- クラブトロリ:巻上装置と横行装置を台車上に備える
- ロープトロリ:別置きした機械装置からワイヤロープを介して動かす
- セミロープトロリ:クラブトロリとロープトロリの中間的な構造を持つ
- マントロリ:運転室を備えたトロリが横行する
採用されるトロリは、クレーンの種類や用途によって異なります。天井クレーンではクラブトロリ式やロープトロリ式などが使われ、橋形クレーンではマントロリ式を採用する場合もあります。
なお、ホイスト式では、横行機能を備えた電気ホイストがガーダなどに沿って移動します。そのため、「ホイスト式」はトロリの一種ではなく、横行部分の構成を表す形式として分けて考えると理解しやすくなります。
クレーンを支えて走行させるパーツ
天井クレーンや橋形クレーンでは、ガーダ、ランウェイ、カンチレバーが荷重や移動範囲に関係します。それぞれの位置と役割を区別しましょう。
ガーダ
ガーダは「桁」とも呼ばれ、トロリが横行する主要な梁です。トロリやつり荷、自重などに耐える強度が求められます。
構造には、I形鋼を使うIビームガーダや、鋼板を箱形に組むボックスガーダなどがあります。
ランウェイ
ランウェイは、クレーン本体が走行する軌道です。天井クレーンでは建物側に、レール走行式の橋形クレーンでは地上や床上に設けます。
天井クレーンの走行路は、レールや継手、支持梁、固定部品などで構成されます。支持構造を含めて「ランウェイガーダ」と呼ぶ例もあります。
トロリが移動するガーダと、本体が移動するランウェイを分けて理解しましょう。
カンチレバー
カンチレバーは、橋形クレーンのガーダを走行レールの外側へ張り出した部分です。脚の外側でも荷を扱えるよう、作業範囲を広げる役割があります。
ふ頭の荷役用クレーンには、船の出入りを妨げないよう上方へ起こせるものもあります。こうした起伏可能な桁は「起伏けた」と呼ばれます。
移動式クレーンの本体と安定を支えるパーツ
移動式クレーンでは、上部本体が旋回し、キャリヤやクローラが移動を担います。主なパーツの役割は、次のとおりです。
- 上部本体:ブームを取り付ける土台。運転室やウインチなどを備え、機種によってエンジン・油圧ポンプなども搭載。
- 旋回ベアリング:上部本体と下部走行体の間で荷重を支え、上部本体の旋回を可能にする部分。
- 足回り:機体を支えて移動を担う部分。クローラ式ではクローラシューや走行モータなど、ホイール式ではキャリヤやタイヤなどで構成。
- アウトリガー:トラッククレーンやラフテレーンクレーンの作業時に張り出し、接地して車体を支える装置。
- カウンタウェイト:上部本体の後方などに設け、ブームやつり荷との釣り合いを取る重り。重量や配置は機種によって異なる。
クローラで支える機種と、アウトリガーで支える機種では構造が異なります。対象機種の図や写真と照らし合わせて、位置と役割を確認しましょう。
クレーンの動きを操作するパーツ
クレーンの動作を操作する制御器には、ハンドルの操作位置を段階的に切り替えるものがあります。この段階的な操作位置を「ノッチ」といいます。
ノッチは、荷重を支える部材や、クレーン車のアクセルそのものを指す名称ではありません。速度などの制御に関わる用語であり、各段階の働きは機器の仕様によって異なります。
まとめ|クレーンの構造は種類・部位・動く仕組みを関連づけて理解しよう
- クレーンは、荷をつり上げる装置、水平移動させる装置、荷重を支える構造などで構成される
- 天井・橋形・ジブ・移動式では、巻上げ、横行、走行、旋回、起伏の組み合わせが異なる
- 部位名は機種によって使い方が異なるため、対象機種の図面や仕様資料との照合が必要
クレーンの構造を理解するには、部位名を覚えるだけでなく、「どの部分が動き、何を支えているのか」を結びつけて確認することが大切です。
まずは、現場で使用する機種の全体図を確認し、「荷を上げる部分」「水平に動かす部分」「本体を支える部分」に分けて部位名を整理しましょう。
株式会社アラヤ
先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
主な事業概要:
AIアルゴリズム開発(ディープラーニング・エッジAI・自律AI)、建設DXソリューション、研究現場の業務効率化支援(Research DX)など、基礎研究から社会実装まで一貫して手がけています。
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