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建設業でAIを活用するには?注目される背景やメリット、活用シーンを解説

建設業でAIの導入を検討しているものの、「自社のどの業務に使えるのか」「人の仕事をどこまで任せられるのか」と悩む方も多いのではないでしょうか。

建設業で活用されるAIは、文書を作る生成AIだけではありません。設計・施工計画の検討、重機の自動化、画像による点検、安全監視など、幅広い業務が対象です。

ただし、AIを導入する際は対象業務と必要なデータを明確にし、人が確認・判断する工程を残すことが重要です。

本記事では、建設業でAI活用が進む背景やメリット、主な活用シーンを解説します。

建設業でAI活用が進む背景

建設業界でAI活用が進む背景には、現場が抱える課題や技術の進展があります。ここでは、AIが求められる理由を背景ごとに解説します。

建設業でAI活用が進む背景1:人手不足と熟練者の減少が続いている

建設業では、就業者の減少と高齢化が進んでいます。2024年の就業者数は477万人で、ピークの1997年から30.4%減少しました。技能労働者も、同期間に455万人から300万人へ減少しています。

参考:「建設雇用改善計画(第十一次)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=75ac0965&dataType=0&pageNo=1)

また、2024年の就業者は55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%で、全産業より高齢層の割合が高く、若年層の割合が低い状況です。

参考:「令和7年版 国土交通白書―第1節 直面する課題」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r06/hakusho/r07/html/n1111000.html)

こうした背景から、AIによる業務の省力化や技能継承の支援が求められています。AIだけに頼らず、採用・教育や働き方の改善と組み合わせることが重要です。

建設業でAI活用が進む背景2:生産性と安全性を同時に高める必要がある

建設現場では、現場の条件に対応しながら、生産性と安全性を高める必要があります。現場ごとに天候や地形、構造物、工程が異なるため、同じ手順をすべての現場へ適用することは困難です。屋外や高所、重機周辺など、危険を伴う作業もあります。

厚生労働省の統計によると、2024年における全産業の死亡災害746人のうち、建設業は232人でした。これは全体の約31%を占めています。

参考:「令和6年における労働災害発生状況(確定値)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001543319.pdf)

AIによる進捗把握や危険検知、重機操作の一部自動化は、業務の効率化や危険作業の低減を支援します。ただし、既存の安全対策と組み合わせ、人による判断・安全確認を継続することが重要です。

建設業でAI活用が進む背景3:国も建設現場の自動化を後押ししている

国土交通省は「i-Construction 2.0」で、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割進め、生産性を1.5倍にする目標を掲げています。

施策の柱は、次の3つです。

  • 施工のオートメーション化
  • データ連携のオートメーション化
  • 施工管理のオートメーション化

AIやデジタル技術の対象は、建設機械による施工だけではありません。現場データの連携や、施工管理の遠隔化・効率化にも広がっています。

参考:「i-Construction 2.0~建設現場のオートメーション化~」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf)

さらに、2026年9月には「建設分野におけるフィジカルAI戦略(中間とりまとめ)」を公表しました。フィジカルAIは、周囲の状況を認識し、AIの判断に基づいて機械やロボットを動かす仕組みです。国は、現場で働く人を支援し、作業負担を軽減するものとして活用する方針を示しています。

参考:「建設分野におけるフィジカルAIの導入」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/sosei_constplan_tk_000036_00001.html)

建設業でAIを活用する4つのメリット

建設業でAIを活用するメリットを、業務効率・安全性・品質・技能継承の4つの観点から解説します。

建設業でAIを活用するメリット1:業務効率化とコスト削減につながる

AIを活用すると、これまで人が一件ずつ確認・作成していた業務を効率化できます。

効率化しやすい業務は、現場画像の確認や進捗の集計、複数案の比較、書類の下書きなどです。AIに一次処理を任せ、人は結果の確認や調整に集中できます。

また、重機やロボットを扱う際、AIを活用すれば少ない人数で作業を進められる可能性があります。工程や資材配置を最適化すれば、待ち時間や手戻りの抑制が期待できます。

ただし、AIを導入すれば、すぐに業務効率化やコスト削減につながるとは限りません。初期開発費や機器費に加え、保守費、教育費、データ整備にかかる費用も含めて判断する必要があります。

建設業でAIを活用するメリット2:危険な作業を減らし安全性を高められる

AIや自動化技術を活用すると、建設現場で人が危険な場所へ入る回数を減らせます。

例えば、ドローンによる高所点検や、重機の遠隔・自動運転でAIを活用できます。AIカメラを使えば、立入禁止区域への侵入や、作業員と重機の接近を検知することも可能です。

また、過去の災害やヒヤリハット、現場映像を分析し、危険につながる兆候を担当者へ知らせる使い方もあります。

ただし、AIの判断に依存すると、検知漏れや誤検知が起こる可能性があります。既存の安全ルールや人による監視を残し、追加の支援手段として使うことが重要です。

建設業でAIを活用するメリット3:施工・検査品質の平準化を図れる

AIは、あらかじめ設定した基準に沿って、画像や計測データを確認できます。異常の可能性がある箇所や判断材料を一定の手順で提示できるため、担当者による確認のばらつきを抑えやすくなるでしょう。

施工計画では、多数の条件を同じ手順で比較可能です。また、検査では、見落としやすい箇所をAIが確認候補として示し、担当者の判断を支援します。

一方、AIが学習した画像と、実際の現場で撮影した画像では、明るさや撮影角度、写っている構造物などが異なる場合があります。こうした違いによって、異常を見逃したり、正常な箇所を異常と判定したりする可能性があります。そのため、最終判定は有資格者や担当者がおこない、その結果を蓄積してAIと運用を改善することが必要です。

建設業でAIを活用するメリット4:熟練者の技術や判断を継承しやすくなる

AIで熟練者の操作データを分析したり、過去の判断事例を探したりすることで、若手への技能継承を支援できます。

例えば、熟練者と若手の重機操作を映像や操作履歴として記録し、AIで動かし方やタイミングの違いを分析します。その結果をもとに熟練者が改善点を説明すれば、若手は自分の操作をどのように直すか理解しやすくなるでしょう。

また、点検記録や施工計画に判断理由を残しておけば、AIが質問に関連する過去の事例を探し、提示する使い方も有効です。若手は、似た状況で熟練者が何を確認し、なぜその判断をしたのかを学べます。

ただし、数値化しにくい感覚や例外への対応まで、AIだけで再現できるとは限りません。熟練者による説明や現場教育、実践と組み合わせる必要があります。

建設業におけるAIの主な活用シーン6選

建設業では、設計・施工計画の検討から重機の操作、点検、書類作成まで、幅広い業務でAIを活用できます。

ここでは、主な活用シーンを6つ紹介します。それぞれの業務でAIに任せられる処理と、人が確認・判断する内容を見ていきましょう。

建設業におけるAIの活用シーン1:設計・施工計画の検討を支援する

設計案や施工計画を検討するときは、AIを使って候補を作成したり、複数案を比較したりできます。

敷地条件や設計条件、BIM/CIM、過去の施工データなどをもとに、AIが条件に合う候補を提示します。工程やコスト、必要な部材への影響を整理することで、担当者が各案の違いを確認しやすくなるでしょう。

クレーンの配置や吊荷の搬送経路など、考慮する条件が多い計画にも、AIを活用できます。ただし、比較に必要な条件がデータに含まれていなければ、その条件を反映した結果は得られません。

担当者は入力条件と提示された案を確認し、法令、構造安全性、施工可能性、発注者の要件を踏まえて採否を判断します。

建設業におけるAIの活用シーン2:工程・進捗・資材・コストを管理する

工事の遅れや予算超過の兆候を把握したいときは、AIによる計画と実績の分析が役立ちます。

工程表、現場画像、日報、天候、資材の納入状況、作業実績などをAIで照合し、進捗状況や遅延につながる変化を確認します。分析結果をもとに、人員・重機・資材の配置案を提示し、担当者の調整を支援する使い方も有効です。

担当者は、AIが示した遅延リスクや配置案を確認し、工程の変更、資材の手配、協力会社との調整などを判断します。現場の事情を踏まえ、提案どおりに進められるか確認することが必要です。

部門や現場ごとにデータの形式や保存場所が異なる場合は、まず対象工程を絞りましょう。その工程で必要なデータがそろっているか、更新されているかを確認することから始めます。

建設業におけるAIの活用シーン3:重機やロボットの操作を自動化する

重機の操作にかかる負担や危険箇所への立入りを減らしたいときは、AIを使った走行・作業の自動化を検討できます。

カメラで撮影した画像をAIで分析し、障害物や作業対象を見分けます。また、レーザーで周囲の形状を捉えるLiDARなどのセンサーを使い、重機の現在位置や、壁面・障害物までの距離を把握することも可能です。

認識した情報や学習した操作データをもとに、システムが走行経路や機械の動作を決めます。トンネルや土工、運搬などの作業では、遠隔操作と自動運転を組み合わせることで、作業者が危険な場所へ入る機会を減らしやすいでしょう。

ただし、センサーには遮蔽物による死角があり、気象や地形、通信状況も動作に影響します。現場で性能を確認したうえで、自動化する範囲、停止条件、人が操作を引き継ぐ手順を決める必要があります。

建設業におけるAIの活用シーン4:ドローンや画像認識AIで検査・点検する

構造物や設備の点検で大量の画像を確認するときは、画像認識AIを使って、異常の可能性がある箇所を探せます。

例えば、ドローンや固定カメラで撮影した画像・映像をAIが解析し、ひび割れ、腐食、さびなどの候補を抽出可能です。検知できる異常の種類は、使用するAIや点検対象によって異なります。

点検員は、AIが示した候補を確認し、点検基準に沿って判定します。AIによる画像解析やドローンによる撮影で期待できるメリットは、次のとおりです。

  • 大量の画像から、確認が必要な箇所を探す負担を減らせる
  • 確認結果を整理し、報告書へまとめる作業を効率化できる
  • 点検員が高所へ近づく回数を減らせる

ただし、撮影角度や明るさ、汚れによっては、異常が画像に写らなかったり、AIが見逃したりする場合があります。候補として示された箇所だけで点検を完了できるかは、点検基準と撮影範囲を踏まえて判断する必要があります。

建設業におけるAIの活用シーン5:AIカメラで現場の安全を監視する

現場の危険な状態を早く把握したいときは、AIカメラによる検知・通知を安全監視の補助に使えます。

現場映像をAIが解析し、設定した監視対象に応じて、立入禁止区域への侵入や作業員と重機の接近などを検知する仕組みです。転倒や保護具の着用状態を確認する用途もあります。

これにより、危険な状態を検知すると、管理者へ通知します。複数箇所の映像を継続的に確認することで、見回りだけでは気づきにくい状況を共有しやすくなるでしょう。

ただし、カメラの死角や照明、人・機械の重なりによって、検知漏れや誤検知が起こる可能性があります。通知を受ける担当者と、状況を確認して作業停止・声かけ・避難を判断する手順を、運用前に決めておきましょう。

建設業におけるAIの活用シーン6:書類作成や社内データの活用を支援する

議事録や報告書の作成、社内資料の検索に時間がかかるときは、生成AIによる要約・下書き・検索支援が役立ちます。

会議音声を文字起こしして要点をまとめたり、日報や工事記録から報告書の下書きを作ったりすることが可能です。設計図書や社内マニュアルを検索対象にすれば、質問に関連する情報を探す用途にも使えます。

担当者は、AIが作成した文書や提示した資料を確認し、必要な修正を加えます。転記や検索の時間を減らすことで、施工、安全管理、発注者対応などの判断に時間を振り向けやすくなるでしょう。

なお、AIの利用前には、機密情報や個人情報の入力可否を確認する必要があります。出力された数値、日付、法令、契約条件、現場固有の情報は元資料と照合し、確認できた内容を業務に使うことが大切です。

建設業におけるアラヤのAI活用事例

アラヤは、重機の自動化、施工計画、インフラ点検などの分野でAI開発に取り組んでいます。

ここでは、各事例について、現場の課題、AIに任せた工程、人に残る工程、公表時点の段階を分けて紹介します。

西松建設・ジオマシンエンジニアリング|山岳トンネルのバックホウを自動化

山岳トンネルの切羽付近では、岩盤崩落事故への安全対策と、労働力不足への対応が課題です。作業員の立入りを不要にすることを目指し、建設機械の遠隔化・自動化が求められていました。

アラヤ、西松建設、ジオマシンエンジニアリングの3社は、一次ずり搬出作業に使用するバックホウの自動化施工技術を共同開発しました。アラヤは、バックホウを対象とする自動化技術の開発を担当しています。

自動化した主な工程は、次のとおりです。

  • 複数のセンサーとSLAMを使い、壁面や障害物を検知する
  • 側壁との距離を保ちながら、駐機場所から切羽まで自動走行する
  • ずりの形状を認識し、ホイールローダがすくいやすい位置へ集積する
  • ホイールローダの接近を検知し、バックホウの旋回範囲を制限する

自動化されたホイールローダと連携することで、オペレータの操作介入を最小限に抑えられます。作業状況に応じて、自動化施工モードと遠隔施工モードを切り替えることも可能です。

2025年4月の発表では、バックホウの走行とずりの集積作業の自動化を実現しています。今後は、より複雑な作業への対応を進め、山岳トンネル施工の完全無人化を目指しています。

参考:山岳トンネル施工の「ずり出し」におけるバックホウを自動化

大林組|コンクリート打設計画システムを共同研究開発

コンクリート打設計画では、打設する区画や順序、一層の高さ、使用する設備などを、施工条件に合わせて検討します。考慮する条件や指標が多く、計画の作成に時間がかかるほか、経験を積んだ技術者でなければ対応が難しいことも課題です。

アラヤと大林組は、2023年にコンクリート打設計画システムの共同研究開発を開始しました。施工条件や複数の指標を踏まえた計画検討を支援し、技術者の負担を減らすことを目指すシステムです。

システムの実現により、打設計画の検討にかかる労力を減らし、生産性や施工品質を高めることが期待されています。打設計画の作成に時間がかかっている場合や、対応できる技術者が限られている場合は、AIによる検討支援を検討できます。

参考:アラヤ、大林組とコンクリート打設計画システムの 共同研究開発を開始

JTOWER|ドローン画像を解析する鉄塔点検システムを共同開発

JTOWERとアラヤは、ドローンで撮影した映像・画像をAIで解析する鉄塔点検システムを共同開発し、導入する方針を2026年8月に発表しました。対象は、JTOWERが保有する7,000本を超える通信鉄塔です。

AIは、ドローンで撮影したデータから、腐食を中心とする劣化・損傷の候補を抽出します。点検員は、AIが提示した候補を確認し、点検基準に沿って判定します。

開発には、JTOWERが保有する鉄塔の構造、点検基準、過去の点検知見を反映します。解析項目、判定の流れ、報告書作成の工程を、実際の点検業務に合わせて設計する方針です。

導入によって期待される効果は、次のとおりです。

  • 大量の画像を確認する作業の効率化
  • 点検品質の平準化
  • 点検にかかる時間の短縮
  • 高所作業に伴う安全リスクの低減

2026年8月の公表時点では共同開発の段階であり、2027年度からの本格運用開始を目指しています。

参考:JTOWERとアラヤ、ドローン撮影映像とAI解析を活用した鉄塔点検システムを共同開発

アラヤは、重機の自動化や点群データを活用したSLAM、BIM/CIMと連携する施工シミュレーション、画像認識AIによるインフラ点検などに取り組んでいます。自社のどの業務にAIを活用できるかお悩みの方は、建設DXサービスのページをご覧ください。

https://www.araya.org/service/construction/

まとめ|建設業のAI活用は対象業務を1つ選ぶことから始めよう

  • 建設業において、AIは人手不足や安全性、生産性、技能継承などの課題を解決する手段の一つ
  • 設計・施工計画、工程管理、重機操作、点検、安全監視、書類作成などで活用できる
  • AIに一次処理や候補抽出を任せ、例外対応や最終判断、安全確認は人が担う

建設業にAIを導入する際は、最初から複数の業務や全社データを対象にすると、必要な費用や調整事項が増えます。初めに小さく試し、効果と課題を確認する方法が現実的です。

まずは自社で「時間がかかる」「危険がある」「担当者ごとに判断がばらつく」のいずれかに当てはまる業務を1つ選びましょう。そのうえで、その業務に使っている画像、映像、BIM/CIM、工程表、点検記録、文書などから、確認するデータを決めることがAI活用の第一歩です。

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株式会社アラヤ

先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。
主な事業概要:
AIアルゴリズム開発(ディープラーニング・エッジAI・自律AI)、建設DXソリューション、研究現場の業務効率化支援(Research DX)など、基礎研究から社会実装まで一貫して手がけています。

Categories: 建設・施工DX
株式会社アラヤ: <p>先端AIとニューロテックを基盤とするディープテックベンチャーです。ムーンショット型研究開発への参画をはじめ、企業・大学との共同研究実績を多数有し、現役研究者とエンジニアが一体となった研究支援を提供しています。大学・研究機関における持続可能な研究体制の構築と研究力強化に貢献してまいります。 <br>主な事業概要:<br> AIアルゴリズム開発(ディープラーニング・エッジAI・自律AI)、建設DXソリューション、研究現場の業務効率化支援(Research DX)など、基礎研究から社会実装まで一貫して手がけています。</p>